●LITTLE GIRL FRIEND 38●
……僕は進藤さんの何を知ってるのだろう……
中学校の時、囲碁部にいたなんてこと…今初めて知った。
この前もそう。
saiって人のことも全然知らなかった…。
今こんなに近くにいるのに……僕は進藤さんのことを実はあまり知らない気がする。
そう思うと急に寂しくなった。
本当の彼女になって、もう半年以上も経ってるのに……
「…アキラ…?」
「抱いて下さい…」
進藤さんの胸に抱き着いて…懇願してみた。
でも、どんなに頼んでも誘っても…彼が僕に手を出すことはない。
好きだから、僕のことが大事だから、本気だから、絶対に最後まではしてくれない。
何故だかちゃんと分かってるのに…僕だって理解してるのに…懲りずにまた求めてしまう。
この寂しさを少しでも埋めたいから――
「……帰ろうか」
僕の胸に触れていた手も離された。
「……進藤さんの意地悪」
「何回言わせるんだよ…ったく」
「意気地無し」
「はいはい、どうせ意気地無しですよーだ」
「…僕のこと嫌いなんですか?」
「…オレの立場も少しは考えてくれませんか?」
「…胸触ったくせに」
「……ごめん」
「……」
ふん、と僕は助手席に戻り、外されたボタンを戻していった。
はぁ…と溜め息をついた進藤さんも、座席を元に戻して…再び車のエンジンをかける。
「…アキラちゃん今何歳だっけ?」
「もう13です」
「まだ13か…」
「喧嘩、売ってるんですか?」
「本当のことだろ?あと4年半か…長いな…」
「……」
僕が18歳になるまであと4年半。
長すぎるよ。
本当にそれだけの期間我慢するつもりなのか?
冗談じゃない…!
「…でも、先生に認めてもらうだけの地位を得るのに…4年半は短いよな」
「お父さんは別に…どんな地位でも進藤さんなら認めてくれると思います」
「…何で?」
「…何となく。お父さんは進藤さんのこと気に入ってるみたいだから…」
「マジ…?そりゃそうだったら嬉しいけど…オレそんなに気に入られるようなことしたかなぁ…?」
「『sai』の弟子だからじゃないですか?」
「………え?」
進藤さんの目が大きく見開く――
「…前に進藤さんが家に来た時、お父さんにsaiとの一局を並べてもらいました。進藤さんの碁にすごく似てました。…師匠なんでしょう?」
「………」
「プロではないんですよね?」
「……ああ」
「saiのこと…僕にも話してくれませんか?」
「…そうだな……いつかね」
「……」
いつか…?
それは…まだ話したくないってことなのか…?
彼女にも秘密ってことなのか…?
僕って信用されてないのか…?
まだ子供だから…?
……また…寂しくなってきた……
「……アキラちゃん…?」
おまけに涙が出てきた。
それに気付いた進藤さんが慌てて僕を抱きしめてくれる。
でも、僕はその手を振りほどいた――
「…も…いいです。帰りましょう」
「アキラちゃん…?」
「早く出して下さい」
「あ…ああ」
ちっとも彼女扱いしてくれない進藤さん。
僕が子供だから。
なら、僕にだって考えがある。
後で後悔したって知らないんだから…!!
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