●LITTLE GIRL FRIEND 33●





「お久しぶりです、塔矢先生」

「ああ…来客は進藤君だったのか。久しぶりだね」

「何か夕食をご一緒させてもらうことになったんですが…オレなんかがお邪魔してもいいんですか?」

「アキラと妻がいいのなら私は構わないよ」


ここに座って、と先生の反対側にアキラちゃんに案内される。

うお、何かすっげー緊張する場所だ。

アキラちゃんのお母さんが手際よくオレの分のご飯も並べてくれて、いざ夕飯が再開した。



「そういえば進藤君、本因坊リーグ入りしたそうだね。おめでとう」

「ありがとうございます。初めてのリーグなんで、もうすっごく楽しみです」

「はは。私にもそんな時があったよ」


意外にも塔矢先生がオレに色々聞いてきて、オレがそれに答えて、アキラちゃんと奥さんがそれを聞いてるって感じで時間が過ぎていった。


「後で一局打ってくれるかね?」

「いいんですか?!ぜひお願いします!」


しかも塔矢先生が後で打ってくれるって!

うわー、すっげぇラッキー!

先生と打つなんて久しぶり……?

いや…オレ、先生と打ったこと…あったっけ…?

ふと、オレの新初段シリーズの時を思い出してしまった。





……佐為……





先生は…佐為のこと…まだ覚えてくれてるのかな…?




「ああ…そういえば、斎藤君が妊娠したそうだね。おめでとう、進藤君」


この先生の質問に、アキラちゃんがピクッと反応したのが分かった。


「えっと…先生、何か勘違いしてませんか?斎藤さんの相手はオレじゃないんですけど…」


「え…?」とアキラちゃん。

「そうなの?」と奥さん。


そうなんです、とオレは頷いた。

今日ここに来た目的をようやくアキラちゃんに伝えることが出来て…オレの方もホッとなった。



「あの、先生。少しだけアキラさんお借り出来ますか?二人きりで話したいことあって…今日はそのために来たんです」

「ああ、構わないが…」


先生の許しを貰って、アキラちゃんの部屋に移動した。


そして茫然とするアキラちゃんを、部屋のドアを閉めた途端に抱きしめる―――



「進藤…さん…さっきの本当…?」

「うん」

「だって斎藤さん…進藤さんの彼女でしょう…?自分の子供だって…この前…」

「アイツともう一回ちゃんと話したんだ。アイツも浮気してたらしくてさ…父親はオレじゃないかもしれないって」

「え…?」

「でも、オレの可能性は低いんだ。オレはちゃんと避妊してたし」

「……」


確かに確率は五分五分だし、ゴムだって100%ってわけじゃない。

もしかしたら……そうなのかもしれない。

でも、斎藤さんは子供の父親にオレを選ばなかった。

てことは斎藤さん自身も違うって実は思ってるってことだ。

その事実だけでもう十分。



「ごめんな…不安にさせただろ?」

「…不安なんてレベルじゃないです。絶対に許さない…って思ってました」

「今も?オレの子じゃなくても?」

「進藤さんの子供じゃなくても、それは偶然に過ぎません。進藤さんが…斎藤さんと子供が出来るようなことをしてたのは事実だし…やっぱり許せません」

「…ごめん」

「これに懲りたら、もう二度と他の女性と付き合わないで下さい!」

「うん、付き合わない。もうアキラちゃん以外と付き合わないし…エッチも絶対にしない」

「…あと僕と正式に付き合って下さい」

「うん…付き合おうか。周りには内緒だけどな」

「はい…」



少し笑顔が戻ったアキラちゃんの口に、オレは優しいキスを落とした――












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