●LITTLE GIRL FRIEND 31●





「唯!待てよ!もう一度ちゃんと話そう!」

「近寄らないでよ!このロリコン男!」


あれからずっと携帯は無視られた。

仕方なく手合いの日に棋院で斎藤さんを捕まえようと試みたが…このザマだ。


「進藤、また破局か?今回は一年もたなかったな」

と和谷達に笑われた。

…オレだってオレだって、本当はこのまま音信不通にしたいよ。

でも…斎藤さんのお腹にはオレの子供がいるからそうもいかない。

しぶしぶ逃げる彼女の後を追いかけた。



「そんなに走るなよ!転んで流産しても知らないからな!」

「煩いわね!本当はそうなって欲しいんでしょ?!本当ムカつく男!」

「んなこと一言も言ってないじゃん…」



ようやく捕まえて、近くの喫茶店に連れていった。


と言っても…何から話せばいいのか……




「…本気で一人で産むつもりなのか?」

「ええ。ヒカルだってそれを望んでるんでしょ?可愛くて若〜い彼女がいるものね」

「…歳なんて関係ねぇよ」

「あら?一番歳を気にしてたのはヒカルじゃなかった?」

「そりゃ…最初はそうだったけど…やっぱり気持ちに嘘はつけないから…」

「犯罪だって知ってるの?何なら私が警察に言ってきてあげましょうか?」

「唯…」

「唯って呼ばないで」

「…斎藤さん」

「なぁに?進藤君」

「……」


これじゃあラチがあかない…。

くそっ、どうすりゃいいんだよ…!



「…もう私に構わないで。春の女流戦まで終わったら、私…引退するつもりだし」

「は?何言って…」

「いいでしょ。プレッシャーから解放されて子育てに専念するの」

「……もしかしてその為に子供作ったんじゃないんだろうな?」

「さぁ?どうかしら」

「……」


斎藤さんの顔はマジだった。

プレッシャーが辛かったってのは…オレが一番よく知ってる。

その為に…支える為に付き合ってやったぐらいだし…。


でも、本当にそんな終わり方でいいのか?

産休・育休でもいいんじゃねぇのか?


「私…そんなに器用じゃないのよね。今まで囲碁一直線だった。一つのことしか出来ないの。だから…両立なんて絶対無理だと思う」

「でもさ…子供って結構金かかるんだろ?女流の賞金なんて高々しれてるし…すぐ底ついちまうぞ?」

「あら、じゃあヒカルが援助してくれる?慰謝料代わりに」

「それは……」

斎藤さんがふふっと笑ってきた。


「嘘よ。大丈夫。夫になって援助してくれる男は他にもいるから。私ってこれでも結構モテるのよ?」

「……」

「もしかしたら…お腹の子もヒカルの子供じゃないかもしれないしね」



は……?



「だって…悔しいじゃない。ヒカルは私と付き合っててもずっと塔矢アキラのことが好きだったんでしょう?だから…私もちょっとだけ、ふふ」

「マジ…で?」


じゃあ…オレの子じゃない可能性もあるんだ…?

よかったような…悪かったような……



「ヒカルの髪の毛…一本だけくれる?誰が本当の父親かぐらい知っておきたいから…産まれたら従兄に調べてもらおうと思って」

「…分かった」


一本だけ抜いて、渡してやった。



「ありがと。じゃあ…私もう行くね」

「…ああ」

「今までありがとう。進藤君」

「…こちらこそ。斎藤さん」

「進藤君の子供だったら、きっと優しい子になるわね。楽しみ」

「……」

「ま、他の男の子供でもいいけど。進藤君より頭よくてカッコイイ、大人な紳士ばかり相手にしてたし♪」

「……」


確率は五分五分ぐらいなのかな?

絶対にオレの子!オレとしかエッチしてない!って言われたらオレも自信なくなるけど、誰の子か分からないなら…オレは結構自信ある。

だって…斎藤さんとする時は特に避妊に気をつけてたから。

よかった。


あとは…アキラちゃんだな――












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