●LITTLE GIRL FRIEND 30●




「…ってぇ…」

「大丈夫ですか…?」

「アキラちゃんの方こそ…大丈夫か?ごめんな…」

「……」



母から斎藤さんの妊娠を聞いた翌日。

もういてもたってもいられなくて、再び進藤さんの部屋にやって来た。

まさか…斎藤さんがいるなんて思わなかったけど……



「…やっぱり斎藤さん…赤ちゃん出来てたんですね…」

「…みたい。オレも今さっき知って…」

「…『さっきの話』って何ですか?もしかして…責任取って斎藤さんと結婚するつもりだったんですか…?」

「結婚まではまだ考えなかったけど…何らかの形で責任は取るつもりだった。でも…今もそう思ってる。例え斎藤さんが必要ないって言っても…」

「自分の子供だから…?」

「…うん。ごめん…アキラちゃん」

「……」


ごめんって言われても許さない。

付き合うだけならまだしも…ううん、本当は進藤さんが斎藤さんと付き合ってること自体も我慢出来ないことなのに…子供って……

僕とはセックスすらしてくれないくせに、斎藤さんとは子供まで作るなんて信じられない!

僕も殴ってやりたい!!



「……僕…帰ります。今はもうこれ以上…進藤さんと話したくない…」

「……ごめん」


進藤さんは謝ってばかり。

謝るぐらいなら…最初からしなければいいのに―――
















「アキラさん?帰ったの?」


ただいまも言わず…放心状態で自分の部屋に向かおうとする僕を…母が呼び止めてきた。


「どうしたの?最近のアキラさん…ちょっと変よ?何かあったの?」

「……別に」

「本当に?」

「………」


母に連れられるがまま…居間に座らされる。

僕には何でも話せる特別な友達がいない。

相談相手がいない。

こんな時…どうすればいいのか分からない……



「お母さんに話せないようなことなの?」

「………」


話せないよ…。

こんなの…中学一年生の悩みじゃないもの。

きっと呆れられる。

驚かれる。


「…お母さんは……もしお父さんが浮気したら…どうしますか?」

「え…?」

ほら、驚いた。

「あの人が浮気?」

ほほほ…と笑われた。

お母さんは自信があるからだ。

お父さんはそんなこと…絶対にしないって…。


「そうねぇ…とりあえず実家に帰らせていただこうかしら」

「え…?」

「離婚してもいいわね。今まで碁の為に散々私をほったらかしにしてきたくせに、他の人に手を出すなんて冗談じゃないですものね」

「お母さん…」

「なぁに?アキラさん。彼氏に浮気でもされたの?」

「…そういうわけでは…ないんですが」

「そう?でもこういう時はね、身を引いた方が負けよ。例え好きな人でも許しちゃ駄目。とことん戦わないとね」

「戦う…?」

「ええ。相手の女と戦ってもいいわね。もし相手も家庭持ちなら、私ならその家庭も粉々に壊してやるわ」


ふふ、と恐ろしいことを簡単に言う母。


お母さんって…こういう人だったの…?



「それで?進藤さんとはいつから付き合ってたの?」

「え……」



ええ??!



「な…なんで…っ」

「分かるわよ。アキラさんの様子がおかしいのって、決まって進藤さん絡みの時ですもの」

「あ…あの……お父さんには…」

「ええ。お父さんには言わないから安心して」

「…すみません」

「アキラさんは年上好みなのね。私と同じね」

「え…?」



…そういえばお父さんとお母さんも10歳以上…僕と進藤さんよりも離れている。


もしかして遺伝…なのかな?













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