●LITTLE GIRL FRIEND 29●
「今…何ヵ月なんだ?」
「…3ヵ月」
「マジかよ…」
はあぁぁ…と嫌味なくらい大きな溜め息をついて、オレはソファーに座り込んだ。
妊娠?
ありえねぇ……
そりゃ、やることはやってたけど……ちゃんと避妊してたのに……
「…やっぱり喜んでくれないんだね」
「当たり前だろ。こんなの…。ちょっと待ってくれ…」
「じゃあ別に…いいよ。私一人で育てるし」
斎藤さんが再び部屋を出て行こうとした。
でも、今度はもちろん引き止める。
「待てって!ちょっと考える時間くれよ!」
「考えてどうするの?好きな子を諦めて、私と結婚してくれるの?」
「それは……」
「私はおろす気はないから。ヒカルなんかいなくても…一人で……」
「唯……」
涙を滲ませてきた。
オレの気持ちを揺るがす魔の涙を。
…くそっ。
くそっくそっくそっ!!
「…ヒカ…ル…?」
斎藤さんをオレは抱きしめた――
こんなの…何かの罰だ。
ああ…そうだ。
12歳のアキラちゃんに手を出した罰なのかも…。
いや…そもそも肉欲に負けて斎藤さんを抱いた罰だ。
何がアキラちゃんが大きくなるまで碁に集中…だ。
全然ダメじゃんオレ……
「オレの子なんだろ…?責任は…取るよ…」
「…いいの?」
「…ああ」
「ヒカル…」
嬉しそうに…斎藤さんもオレに抱き着いてきた。
もう…どうにでもなれ……
ピンポーン
「……」
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
「…ヒカル、誰か来たみたい」
「あ…、ああ…」
斎藤さんを離して、よろよろと玄関に向かった。
足が重い。
まるでオレのこれからの人生を物語ってるみたいだ。
カチャ
「はい…」
おまけに止どめを刺されるかのように――ドアの前に立ってたのは…
「アキラ…ちゃん…」
「進藤さん。本当なんですか?」
「え…?」
「斎藤さんが妊娠したって、本当なんですか?」
「え?ちょっ…なんで…知って…」
「母から聞いたんです。もう居てもたってもいられなくて…僕…」
アキラちゃんまで涙を滲ませてきた。
うう…ちょっと待ってくれよ!
泣きたいのはオレだ!!
「ヒカル?誰が来たの…?」
「ゆ…唯!来るな!お前には関係ない!!」
と、叫んでももちろん遅かった。
顔を見合わせたアキラちゃんと斎藤さん。
アキラちゃんは斎藤さんを思いっきり睨みつけ……
斎藤さんは…大きく目を見開いた……
「塔矢…アキラ?名人の娘さんの…」
「はい。初めまして、斎藤女流名人」
「ヒカル…知り合いだったの?」
「…うん……まぁ……」
オレの様子で鋭い斎藤さんは気付いたのか、ハッと顔を上げてくる。
「まさか……え…でも名人の娘さんって…確かまだ中1…」
「中1ですが、何か?愛があれば歳なんて関係ないと思いますけど?」
「アキラ!!」
アキラちゃんの口を慌てて抑えた。
余計なこと喋るな!
…て、もう遅いかもしれないけど……
「は…そりゃあ…付き合えないわよね…中1じゃあ」
「……」
「でも、手を出しちゃったのよね!」
「それは……」
「見損なった!一体何考えてるの?!最っ低!!」
「……」
「さっきの話、やっぱり無しにして!もうこっちから願い下げよ!このロリコン!!」
さようなら!!と、最後にもう一発ビンタをくらわせて…斎藤さんは出ていった――
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