●LITTLE GIRL FRIEND 27●





「なに?この血…」

「え?」


アキラちゃんが泊まった翌々日に、斎藤さんがオレの部屋にやってきた。

ベッドのシーツに付いた血の痕を見つけた途端――彼女の表情が変わった。


ていうか、何で血??

もしかして指…ちょっと奥まで入れすぎた?

もしくは爪で傷つけちまったのかも?



「ヒカル…まさか…」

「は?何言ってんだよ、違うって。そういえば一昨日鼻血出たから…たぶんその時のだよ」

「ふーん。じゃあこの髪の毛は?」


斎藤さんがベッドに落ちてた長い髪の毛をオレに見せてきた。


「お…お前のだろ?」

「私の髪はこんなに黒くないわ」

「そ、そうか?」

「ヒカル…正直に言いなさい。何なら遺伝子の研究所に勤めてる従兄弟に調べてもらってもいいのよ?」

「…………ごめん」


正直に謝ると、斎藤さんがはぁ…と大きな溜め息をついた。


「もう…信じられない…。例の子…?」

「…うん」

「誰なの?いい加減名前言いなさいよ」

「……」

「言えって言ってるのが聞こえないの?!」

「言うわけ…ねぇじゃん」

「言えないってことは私の知ってる子なのね!」

「……」


斎藤さんは鋭い。

しかもオレはすぐに顔に出ちまうからバレバレで…もしかしたらそのうちアキラちゃんだってバレちまうかも…。

いやいや、バレたら一貫の終わりだ。

12歳の子に手を出してるなんてことがもしバレたら……



「そんなに私と別れたいの?そんなにその子のことが好きなの?」

「……」

「でも、私は別れないから!絶対に!」


オレにビンタだけくらわして、斎藤さんは部屋から出て行った――



「…い…ってぇ…」


…くそっ、面倒くさい女だ。

やっぱりよりなんか戻すんじゃなかった。

確か四年前も…こんな感じじゃなかったか?

あの時は浮気はなかったけど、オレは彼女の性格に嫌気がさしてて…毎日の様に喧嘩してた。

でも斎藤さんは最初絶対に別れないって言ってた。


結局…別れたけど……






「…あれ?あいつバッグ忘れてる…」


持って行ってやろうと手に取ると、チャックが開いてたのか――中身がほとんど落ちてしまった。

こんな時にぐちゃぐちゃな中身のバッグなんか見たら、ホント興醒め。

財布とハンカチと手帳しか入ってないアキラちゃんのカバンとは大違いだ。

(それもある意味どうかと思うけど…)



「……ん?」






これっ…て……






「ヒカル!私バッグ忘れて―――」


斎藤さんも気付いたのか、慌てた様子で帰ってきた。


でもって、オレが手に持ってた『それ』を見て……青ざめる……


いや…青ざめたいのはこっちなんですけど……




「か…勝手に見ないでよ!返して!」

「唯…それ…」

「………」

「それ…お前の…?」

「………」


コクンと頷いてきた。


「唯…」

「なによ…そんないかにも困った顔しないでよ…。だから……ヒカルには言わなかったのよ…」

「………」

「どうせヒカルはおろせって言うんでしょ?好きな子がいるもんね!その子と一緒になりたいんでしょ?!なればいいじゃない!」





斎藤さんが落とした『それ』。


それは紛れも無く『母子手帳』だった―――












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