●LITTLE GIRL FRIEND 26●
目が覚めてもまだ進藤さんの腕の中に僕はいた。
嬉しくて心地好くて恥ずかしくて…幸せを実感する。
昨日結局僕らは…体は一つにはならなかった。
ちょっと残念だけど、ある意味それが返って嬉しかったりもする。
挿れるだけがセックスだけじゃない。
それよりもっと大事なことを進藤さんから教わった気がしたから――
「ん……アキラちゃん…起きた?」
「はい」
抱き着いたら進藤さんが起きてしまった。
また‘ちゃん’付けに戻ってる。
何で進藤さんは怒った時とかエッチの時だけ呼び捨てにするんだろう…?
「今何時…?」
「えっと、時計…時計…あ、5時過ぎです」
「そっか…じゃあ着替えたら送っていくよ。明るくなる前の方がいいだろ?近所の目もあるし…」
「大丈夫です。制服のまま来たから、もうこのまま学校に行きます」
「そう?」
「はい」
取りあえずシャワーだけ借りることにした。
だって…なんか下半身がべとべとで気持ち悪いし、進藤さんのがかかったからお腹も洗いたいし…。
というか…男の人のアレって白なんだ?
もっと透明なのかと思ってた。
思い出すと、また顔が火照ってくる。
「ありがとうございました」
シャワーから出ると進藤さんが朝ご飯を作ってくれていた。
トーストに目玉焼きにベーコンにサラダに…。
久々の洋食の朝ご飯にちょっと嬉しくなる。
「味噌汁とかの方がよかった?」
「大丈夫です」
「よかった」
進藤さんと一緒に朝を迎えて…一緒に朝ご飯。
何だか夫婦になったみたいで恥ずかしい。
でも、昨日進藤さんは僕がもし同い年だったら、すぐにでも結婚したいって言ってくれた。
いつかこんなことが当たり前になる日が来るといいな。
「進藤さんは今日はお休みなんですか?」
「ううん、昼から和谷んとこの研究会」
「和谷…?」
「和谷四段は知らない?オレの同期」
「そうなんですか」
「越智五段は?」
「知りません」
「アキラちゃんって意外と棋士の名前知らないんだ?オレの名前は知ってたのに」
「低段の方までまだ覚えてません。進藤さんは前髪が目立ってたから…何となく」
「はは、なるほど」
朝食を食べた後、昨日話してた三次予選の決勝を並べてもらった。
進藤さんらしい一局だった。
僕も早く…公式戦で進藤さんと打ってみたいな。
あの緊張感の中だと一体どんな棋譜が出来るんだろう。
四月からが楽しみで仕方がない。
「じゃあ、研究会の後囲碁サロンにも行くから」
「はい、待ってます」
「いってらっしゃい。気をつけてな」
「はい、行ってきます」
斎藤さんと付き合う代わりに僕が出した条件。
また進藤さんと碁会所で打てるのかと思ったら、放課後が待ち遠しくて仕方がなかった―――
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