●LITTLE GIRLFRIEND 2●





「緒方さん。昨日進藤プロと打ったんですよ」

「ほう」



進藤プロと打った翌日―――僕はお父さんの研究会に来ていた緒方さんに、ウキウキと彼との碁を並べていた。



「すごく面白い碁を打つんですよ」

「知っている。進藤は妙手の使い手だからな」

「へぇ…そうだったんですか」

「どこで進藤に会ったんだ?」

「学校帰りにたまたま入った碁会所です。でも帰りが遅いってお母さんに怒られちゃった。しばらくは行けないかも…」


また行くって約束したのに……



はぁ…と溜め息を吐く僕を見て、緒方さんが目を細めて笑ってきた。


「進藤が気になるか?」

「……はい」

「知ってるか?アイツの新初段シリーズの相手は塔矢先生なんだ」

「え?お父さんが新初段シリーズを…?」

「ああ。珍しいだろう?しかも先生のご指名付きときたもんだ」

「………」

「ま、今の進藤はしょせん二次予選止まりのヘボ棋士だけどな。先生もオレも買い被りすぎたみたいだ」

「………」


ヘボ棋士…?


そんな風には思わなかった。

毎日何人ものプロと打ってるこの僕がそう思ったんだ。

少なくとも囲碁センスはお父さんや緒方さんに負けるとも劣らない。

すごく魅力的な棋士だと思ったのに―――


…だけど家に残っていた過去の週刊碁を読み返すと―――彼の戦績はいいとは言い難い。

先週の手合いも黒辺五段に負けている。

棋聖の二次だったのに…。



「明日、先生の天元の授位式がある。進藤も来るはずだ。アキラ君も来るか?」

「いいんですか?」

「ああ。この機会に記者どもに顔を売っておくといい」

「………」


顔を売るとかそんなことに興味はないけど、進藤プロにまた会える。

それはすごく嬉しい!


また打てるかな?

いっぱい話せるかな?


楽しみだ――













「三冠おめでとうございます、塔矢名人」

「ありがとう」



翌日――緒方さんに連れられてお父さんの授位式が行われるFホテルにやってきた。

お父さんもお母さんも挨拶回りで忙しいみたい。



「ああ、いたいた。おい、進藤」


緒方さんが素早く彼を見つけて、こっちに来いと手招きしてくれた。


「お疲れ様です緒方先生……て、あれ?」


横にいた僕を見た途端、大きな目を更に大きく見開いている。


「アキラちゃん…?」


緒方さんがギロッと進藤プロを睨んだ。


「気安く‘ちゃん’付けするな。塔矢先生の娘さんだぞ」

「へ?え…」



ええーーーっ!!?と彼が大声を上げた為、会場中の全員がこっちを向いたのは言うまでもない―――















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