●LITTLE GIRL FRIEND 14●
「美味しいわね、アキラさん」
「はい」
進藤さんとのデートから一週間後。
今日はクリスマスということで、家族揃って久々に外食することになった。
ホテルのレストランでのディナー。
周りは年齢層は幅広いものの、見事にカップルだらけだった。
いいなぁ…とチラチラ見てしまう。
僕もクリスマスは進藤さんと過ごしたかった。
もしあの時僕が逃げなかったら…と、この一週間ずっと後悔していた。
でも、あの時は恐かったんだ。
進藤さんが知らない人になったみたいで。
自分で誘ったくせに、やっぱり付いていけなくなって途中でギブアップだなんて…。
自分の子供さ加減に笑えてくる。
進藤さんの言う通り…やっぱり僕はまだまだ子供だったんだ。
早く大人になりたい。
一日も早く大人になれるよう努力しよう。
そしたら…今度こそ進藤さんと―――
「…あら?」
「どうした?明子」
「誰だったかしら。確か…」
食事が終わって、タクシー乗り場に向かう途中に、母が立ち止まった。
その視線の先を見ると――
「ああ、進藤君と斎藤君だね」
「やっぱり。あなた挨拶しておきます?」
「若い二人の邪魔しちゃいかんよ」
「そうですわね」
母が意味深にふふっと笑った後ろで――僕は茫然と立ち尽くした。
「アキラさん?早くいらっしゃい」
ショックで足が動かない。
進藤さん…どうして斎藤女流棋聖なんかと…一緒にいるんだ…?
何かの集まり?
ううん、どう見ても二人きりだ。
進藤さんも食事に?
…ううん、食事だけならフロントなんかに寄らないはず。
手…なんか繋いじゃって。
しかも今日はクリスマス。
クリスマスに…女の人とホテルって、いくら子供の僕でもその意味くらい分かる。
彼女と別れたんじゃなかったのか?
しばらくは誰とも付き合わないんじゃなかったのか?
僕を彼女にしてくれるんじゃなかったの?
涙が…滲んできた……
「アキラさん?どうかしたの?」
「……何でもありません」
ゴシゴシと目を擦って、タクシー乗り場にいるお父さんの元へ走っていった。
きっと僕が子供だから、セックスのセの字も知らない子供だったから、進藤さんは飽きれちゃったんだ。
だから『さよなら』って言われたんだ。
急がないと。
本気で勉強して知識を身に付けて、あんなオバサンよりやっぱり僕の方がいいって…絶対に言わせてみせる。
年なんてもう関係ないって言わせてみせる。
棋力だって負けない。
あんな女なんかに絶対負けないんだから!!
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