●LITTLE GIRL FRIEND 13●





「最悪…」


アキラちゃんのタクシーを見送った後、自分の部屋に戻ったオレは……床に突っ伏した。

やっちまった。

小学生の女の子を襲っちまった。

最悪だ。

何やってんだよオレ……


『いやだ…』

と拒否したアキラちゃんの声が耳から離れない。

恐かったんだろう。

そりゃ恐いよな。

小学生だぞ?

オレが小学生の時は子供の作り方さえロクに知らなかった。

女の子の方が成長は早いって言うけど…、でも、いきなりアレはないだろう。


とにかく、もうアキラちゃんに会うのはやめよう。

会いに行くのはやめよう。

二人きりで会うのは絶対やめよう。


もうこれ以上…彼女を傷つけたくない―――









「進藤先生。急で申し訳ないんですが、24日って空いてますか?」


翌日――事務に寄るとイベントの手伝いを頼まれた。

なかなか人員が揃わないらしい。

そりゃそうだ…クリスマスだもん。

家族の、恋人達の、一大イベント。

オレも…もしアキラちゃんをあのまますんなり帰していたら、クリスマスもデートしようかって、また誘ってたかもしれない。


「あー…いいですよ。詳細下さい」

「ありがとうございます。助かります」


内容を見てみると、クリスマスとは無関係のいつもの囲碁体験イベントだった。

笑える。

クリスマスにじーさんばーさんのお相手ですか。



でも、当日会場に行くと――ロビーに大きなクリスマスツリーがデカデカと飾られていた。

会場の飾り付けもそれなりで、こんな日に一人でいるよりかはマシか…と思い始めてきた。

しかも……


「あれ?進藤君?」

「……斎藤さん」

「進藤君も手伝い?嬉しい!」

「……」


しかも……斎藤女流四段もいた。


「クリスマスに仕事だなんて、もしかして進藤君今フリーなんだ?」

ふふっと彼女が笑う。

「斎藤さんこそ…」

「あら、もう『唯』って読んでくれないの?他人行儀ね」

「……」


唯…は彼女の下の名前。

三年前はそう呼んでたんだっけ?

そう――彼女はいわゆるオレの元カノってやつだ。

オレが16〜17歳の時に、一年くらい付き合っていた年上の彼女。

別れた原因は何だったかな。

ケンカ…だっけ?

オレも子供だったんだよなぁ…。

今も…だけど。


「これ終わったら一緒にご飯でも行かない?」

「…いいよ」


このイベントでのオレの仕事は、ひたすら指導碁だった。

しかも斎藤さんも同じ。

チラッとたまに彼女の方を見ると、目が合っちゃったりして…少し恥ずかしくて顔の温度が上がる。


オレらが付き合ってた時は、彼女もまだ当然10代だった。

ハタチを超えてから、改めて意識すると…綺麗になったよなぁって思う。

女流タイトルも取って、あの頃にはなかった余裕が見られる。

大人の女の人って安心出来る。


アキラちゃんといる時には…感じられない気持ちだ。


もちろん、アキラちゃんの方が好きだ。


でも……もう会わないって決めたから―――











NEXT