●LITTLE GIRL FRIEND 12●
「―……ん……っ…ん…」
僕のファーストキスは進藤さんと、12歳の時に。
僕らの大切な思い出として、そう心に一生残るのだろう。
優しく触れるだけのキスは…次第に深く、濃厚になっていった。
舌が中に入ってきて…僕のものと絡められる。
初めての経験にただドキドキと胸を高鳴らせて…進藤さんに身を任せていた。
「―はぁ…は…ぁ……」
唇が離れると、続けて僕の頬や目…額に耳…顔のあちこちに何度も口付けてきた。
…嬉しいな。
僕が求めていたのはこういう大人のデートだったから。
やっと大人扱いされて…すごく嬉しい。
「アキラちゃん…」
「………」
……でも、段々いつもの進藤さんと何だか様子が違ってきて…少し不安になった。
どうしたんだろう…。
いつもより声が低くて…色っぽい気がする。
それに、目付きも違う…気がする。
何て言うか…熱を持ってる感じ?
――…え?
進藤さんに抱きしめられた体は、もう彼のなすがまま。
あっという間に廊下の床に押し付けられ、僕は下から進藤さんを見上げる形になってしまった。
体が密着してて…体重をかけられて。
嫌だ……何をする気なんだ?
怖い……
「アキラ……」
「…やっ」
首筋にキスされた途端――僕の頭から血の気が引くのが分かった。
まさか…まさか、あれ…するのかな?
セ…セックスとかいうやつ。
生理の授業を受けた時に、一応原理は習った。
何をどこに入れたら子供が出来るってことを教えてくれた。
でも、僕の知識はそれだけだ。
詳しい手順なんて知らない。
そうだよ。
進藤さんには知ってるって見栄張っちゃったんだ。
だって…子供扱いされたくなかったから。
でも僕は…本当に子供だったみたい。
ただ真っ青になって……我慢するしかない。
それか…泣くしか出来ない……
「……ぅ…」
「…アキラ?」
「…いや…だ」
僕の声に気付いた進藤さんは、我に帰ったように…バッと僕の上から退いた。
「ごめん…!オレ何やって……ごめん!ごめんアキラちゃん!」
「もう…帰る…」
「ごめん!本当ごめん!」
何度も謝ってきた。
…ううん、謝るのは僕の方だ。
だって進藤さんは最初から駄目だって拒否してくれてた。
なのに…僕がその気にさすような態度を取ったから。
何も知らないくせに―――
「…ごめん…なさい」
「なんでアキラちゃんが謝るんだよ。悪いのは全部オレだから」
「違う…」
「違わない」
マンションの一階まで僕を連れていった進藤さんは、タクシーを掴まえてくれて…僕を乗せた。
行き先を運転手に告げて、タクシー代をくれた。
「…さよなら。アキラちゃん…」
「…え?」
この日を最後に、進藤さんは僕の前に現れなくなった―――
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