●LARGE FAMILY V 1●
「眠ぃー…」
――午前3時過ぎ。
手合いの後、夕方から僕の家に打ちに来ていた進藤が、眠そうに目を擦った。
「もう今日はここまでにしておく?布団敷くよ」
「うん…。サンキュー塔矢…」
既に意識が朦朧としているらしく、頭がコクコク揺れている。
客間に布団を敷いて再び居間に戻って来ると、進藤は碁盤の横に倒れてしまっていた。
「進藤!ちゃんと布団で寝ろ!風邪ひくぞ?」
「んー…塔矢ぁ…」
伸ばしてきた手に、何だろうと触れてみると――
「ぅわ…っ―」
そのまま腕を引っ張られて、進藤の上に倒れてしまった。
下から体をぎゅっと抱き締められる―。
「ちょっ、進藤っ…!」
「…あったか…い」
「僕は布団じゃないぞ?!」
「ん…」
「離せっ…!」
「……」
黙ってしまった進藤の顔を覗きこむと、スースーと気持ち良さそうに寝息をたてて眠ってしまっていた。
「もう…」
抱き締められて身動きの取れない僕。
確かに思いっきり力を込めれば……引き剥がすことは可能だろう。
だけど…出来ない。
僕の方からも彼の胸に抱き付いた――
「…進藤…」
彼の心音。
ドクンドクンと規則的に音を鳴らして、僕の心音と同調する。
すごくドキドキする。
胸が苦しくなる。
「……好きだよ…」
彼が寝てるのをいいことに、こそっと耳打ちした僕の想い。
好きだよ、進藤。
ずっと…ずっと前から――
「…オレも…好き…塔矢」
えっ?!
思いも寄らなかった返答に、慌てて顔を覗きこむと――相変わらずスヤスヤ眠っていた。
寝言?
空耳?
「進藤…?」
「……」
「進藤っ!」
「…ん…?」
うっすらと微かに瞼をあげてきた―。
「…と…うや?」
「進藤、僕のこと…好き?」
「ん…、好き…」
そう言うと、頬に一瞬だけキスしてくれた―。
途端に顔が真っ赤になる――
――僕らって…両想いだったんだ…――
初恋の彼と両想いだったというその事実に――僕の心は信じられないぐらい踊ってるのが分かる。
ねぇ…進藤。
本当に?
本当に僕のことが好きなの?
僕が告白したら付き合ってくれる?
僕がプロポーズしたら…結婚してくれる?
子供…たくさん作ってもいい?
夢だったんだ。
憧れのあの人と同じように……同じ数だけ産むことが――
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