●INITIAL EXPERIENCE 4●
目を開けると天井が霞んで見えた。
目が潤んでる…。
視線を少し下に向けると、僕の手の平にキスをしている進藤の姿があった。
「塔矢…好きだよ」
「ん…―」
進藤の首の後ろに手を回して、ゆっくり唇を重ねた―。
進藤の手は片方は僕の頬に触れていたけど、もう片方は胸に触れていて…優しく揉まれている。
その手は滑るようにお腹の当たりに移動し…腰に脚に…どんどん移動していった。
目をぎゅっと瞑ると、ますますその手の動きが気になってしまう―。
「やっ…―」
下着の中にも手が滑り込んで来て、思わず反応してしまった。
指で探られて自分の体がますます熱くなっていくのが分かる―。
感じるのはこそばゆさと気持ち悪さだけ…。
やっぱり逃げたい―。
でも進藤と一つになってみたい―。
恐怖と興味が入り交じった複雑な感情をぎゅっと唇を閉めて噛み殺した。
「…ぁ…っ」
前の方を弄っていた指がどんどん奥に、後ろにずれていって、ついに局部に触れた。
念入りに探られるうちに、ぴちゃぴちゃとイヤらしい音が聞こえてくる。
入口のあたりを重点的に掻き回されるうちに自分自身が変な気分になってくるのが分かった…。
すごく息も乱れてきて頭がぼーっとする。
「きゃ…っ」
進藤が僕の膝頭を掴んで、左右に大きく分けた。
一番恥ずかしい部分を丸見えにされて、その上彼の体が手だけじゃなく全体的にそこに近付いていく―。
羞恥に耐えられず、思わず脚を閉じてしまった。
「塔矢ー、閉じちゃダメだって…」
進藤が一瞬僕の顔を見て、呆れ気味にそう言いながら…太股のあたりにキスを落としてきた。
「だって…恥ずかしすぎる…」
「大丈夫だから…」
再び開かされた後、彼の指と唇がそこに触れる…。
――そう
唇が、だ!
指で広げながら――舌で内部を前から順々に…刺激を与えるように、舐められて…探られていく―。
ぜ、全然大丈夫じゃない!
何をするんだ!
何が大丈夫なんだ?!
それはキミだけじゃないのか?!
僕は全く大丈夫じゃないぞ!
恥ずかしさと気持ち悪さと…よく分からない感じが頭の中でごちゃごちゃになって、思考を鈍らせて行く―。
「…ふ…―」
腕で口を押さえ付けて…顔を半分隠し…、下を見ないよう…霞んだ天井をじっと見つめた。
いつもの僕の部屋だ…。
いつもならもうそろそろ寝ようと布団に入る時間…。
今も一応入ってるけど………全裸だ。
いつの間にか上も下もパジャマだけじゃなく…下着までも脱がされて…。
こんなの初めて…。
布団の柔らかさが直に背中に触れている…。
そして彼が…進藤が…、こんな時間にこの部屋にいるのも初めて…。
そして僕の体を…優しく…弄っている。
彼に触られるのは、ここ数ヶ月の…僕の…望みだったはず…。
ようやく今…それが叶ってる…。
だけど…、想像してたのより…ちょっと…いや、かなり…―。
「ん…っ…」
彼の指が中に入ってきた。
ゆっくり…慎重に、でも広げるように微妙に動かしながら…緩めるように―。
「…ぁ…―」
ぎゅっと涙目の目を瞑り、彼の動きを感じとった…。
もうそれ以上奥に入れるのはやめて欲しい…。
ますます思考がおかしくなって…変な気分になる。
「…あ、…ん…」
「色っぽい声…」
え…?
瞑ってた目を開けると――目の前に進藤の顔があった。
いつから…。
「どんな感じ?」
「え…」
どんなって…。
どう答えたらいいのか躊躇していたら、彼が指を動かし始めた―。
「…ゃ…っ―」
更に奥まで入れてきたと思ったら、先を少し動かして――また引き戻される。
動く度に微かに反応して、声を出す僕を見て…進藤が嬉しそうに何度も繰り返す―。
「塔矢可愛い…」
そう言いながら…頬から首の境のあたりに、音をたててキスをしてきた。
明らかに僕の反応を面白がってる…。
ふざけるなっ!
―と、口にしようかと思ったけど、今やめられるとそれはそれで困るので…開けかけた口を閉じた。
それに…笑ってるけど、どことなく…進藤の顔にも余裕がなさそうな雰囲気が漂って見えて―。
たぶん…すぐにでも入れたいんだろうけど、僕を傷つけないように…この慣らす行為を慎重にしてくれてるんだろう…。
そう思うと…嬉しいな…。
「増やすぜ?」
「え…?……っ―」
一度全部出した後、今度は中指も一緒に入ってきた。
入口のあたりがチクリと痛む。
どうしよう…。
徐々に慣らされてるとはいえ、かなり怖くなってきた。
増やされる度に最初に痛む痛さに腰が引けてしまう…。
その大きさに慣れてしまえば、何とか…気分をいい方向に持っていけるんだろうけど…。
彼の愛撫に感じる余裕もなく、どんどん進められる度に…恐怖で顔が引きつる…。
「…そろそろ、いい?」
そう言うと、体を起こした進藤が、更に僕の脚を広げた。
「待って…っ!」
「え…?」
怖い…。
怖い怖い怖い。
ものすごく怖い。
だけど…しなくちゃ一歩も先には進めない。
またそれで悩むのはごめんだ。
でも…やっぱり怖い!
「怖い…?」
口には出さなかったけど、微かに青ざめてる僕を見て…気持ちを感じ取ったのか、進藤が聞いてきた。
コクンと首を縦にふる。
「そっか…」
頷いた進藤と目を合わせたまま、微妙な沈黙が僕らの間を走った。
「…オレもすげぇ怖い」
え…?
「その…オレさ、まだ経験ないから…、自分がどうなっちまうのか想像もつかねぇ…」
「……」
「気持ちが抑えきれないで…むちゃくちゃやって…オマエを傷つけちまいそうで…」
「そう…なんだ」
「ごめんな、頼りなくて…」
「……」
別に頼りなくてもいいんだけど…。
既に経験豊富で慣れてるって方がむしろ嫌だし…。
そんなキミに抱かれるのはごめんだ…。
だから――
「塔矢…?」
僕の方も体を起こして、進藤の胸にぎゅっと抱きついた。
大丈夫…。
平気…。
相手はキミ…、僕が一番大好きな…一番大切なキミ…。
そう思うと自然と不安がなくなっていく―。
「…進藤」
「なに?」
「僕も初めてなんだ…」
「……うん」
抱きついていた腕を解いて、進藤と顔を見合わせた。
「だから…初めて同士、頑張ろう…?最初っから完璧じゃなくてもいいよ…。それより僕はありのまま…今のキミに抱かれたい―」
「塔矢…」
今度は進藤の方が僕を抱き締めてきた―。
「好きだ…」
「僕も…」
その後僕は髪や首や肩にいっぱいキスをされて――ゆっくり布団に再び倒された―。
もう怖くないよ…。
キミだから…僕は安心出来るんだ―。
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