●INITIAL EXPERIENCE 5●
「ふあぁぁー…よく寝たわぁ〜」
外の明るさでようやく目が覚めた。
時計を見ると既に9時を回っている。
「うわっ、11時間も寝てもた」
慌てて布団から起き上がる。
「進藤起きや!進…」
隣りの布団を見ると寝ていたはずの進藤がいない―。
「何や、もう起きとんかいな。オレも起こしてくれたらえぇのに―」
薄情な奴やな、と客間を出た。
「おーい、進藤〜」
居間に行ってみると誰もいなかった。
「あれ…?」
台所かな?と覗いてみたけどそっちにもいない…。
朝風呂か?と風呂場にも行ってみたけど…やっぱりいない。
おかしいなぁ…。
どこ行ったんや?
塔矢もおらんし…。
確か塔矢の部屋ってこの辺だったよな…?
昨日あいつの部屋から碁盤を運んだから覚えとる。
「塔矢!もう起きとんのか?」
女の子の部屋をいきなり開ける訳にはいかんから、先に声をかけた。
「あ、うん!起きてるよ!」
障子の向こうから声が返ってきた。
ほっ…
良かった…
塔矢までおらんかったら、どうしようかと思った。
「進藤がおらんのやけど、塔矢どこに行ったか知らん?」
「進藤ならここにいるけど?」
「は…?」
「バッ…何正直に答えてんだよっ!」
進藤の声が中から聞こえた。
何で進藤が塔矢の部屋におるんや?
まさかオレを差し置いて対局を―?!
「塔矢入るで?」
「えっ?!」
「ちょ、ちょっと待て社!」
二人の言葉を無視して一気に開けた。
ガラッ
「きゃっ…!」
「社っ!」
へ…?
中を見ると上半身裸の進藤が突っ立っていて、戸が開いたことに驚いた塔矢が布団の中に蹲った。
「お前ら…」
「信じらんねェ…」
進藤がオレの方を呆れたように睨みながら向かってきた。
「待てって言っただろ…?」
ピシャッ
勢いよく戸を閉められた後、思わず腰が抜けた。
あ、アイツらってアイツらって…。
もしかして…。
もしかして…そういう関係なんか?!
昨日までそんな雰囲気全然なかったのに!
突然のことに混乱したまま、取りあえず塔矢の部屋を離れて―居間に向かった。
十分後――二人が顔を出した。
「おはよう社…今から朝食の準備するから―」
頬を少し赤めた塔矢が目をそらしながら言った。
「あぁ…すまんな…」
「…おはよー」
その後ろから進藤。
微妙な緊張がオレらの間を走る。
「さ、さっきはすまんな…」
「いや…、オレらも悪かったし…」
お前のことすっかり忘れてた…と進藤が謝ってきた。
「オマエらって付き合っとるんや?」
「あぁ…」
「…塔矢元名人も知っとるん?」
「うん…一応公認」
「ほんまかいな!やっぱすごいわお前…」
「何が?」
何がって…コイツ分かっとらん時点で強敵や。
普通あんな親の一人娘や、手ェ出すの勇気いるで?
「オレだったら絶対親に隠れて付き合うけど…」
「アイツがそういうの嫌がるんだ。何でも話すタイプだから」
だからってなぁ…。
そう簡単に許してくれへんで普通…。
一体どんな手使ったんや??!
「反対されんかったん?」
「いや?むしろ歓迎されたけど?アイツの両親最近ずっと海外だし、明子さんからなんて『進藤さんがいてくれるから安心して行けるわ』とか言われちゃったし」
「明子さんて誰や?」
「塔矢の母さん」
ひょえー、ホンマに公認なんやな。
「朝食の準備出来たよ」
塔矢が台所から戻ってきた。
「ごめん、本当に簡単なものなんだけど」
「食べれたら何でも構へんて」
で、居間で3人仲良くテーブルを囲うことになったんはいいんやけど、この雰囲気は何?!
コイツらさっきから一言も話さんし!
気怠そうに食べやがって…。
そう、気怠そうなんや…。
勘弁して…。
オマエらちゃんと寝ろ言うた倉田さんの言葉、総無視かい!
しかも雰囲気的に二人ともお互いめっちゃ意識しとる割にはぎこちなくて………まさかとは思うけど……。
て、落ち込むから考えるのやめとこ。
塔矢が洗い物をしている間、今にも眠り出しそうな進藤に声をかけた。
「…なぁ、お前ら昨日ちゃんと寝たんか?」
「聞くな」
「でもまさか一睡もしてないやいうこと…ないよな?」
「………」
マジですか?
コイツらアホか?
何考えてんのや、この大切な北斗杯の前に!
「頼むから今夜はちゃんと寝てくれや?睡眠不足で惨敗や格好ならんで?」
「分かってるって」
ホンマかいな…。
だけど結局その夜も進藤はオレの横で寝んかったし、北斗杯中もどちらかの部屋を訪ねたらいつも二人は一緒でした。
この二人の仲の良さだけはよく分かった北斗杯でした。
終わり。
来年はメンバー変えてほしい…。
―END―
以上、ヒカアキ初体験話でした〜。
題の「INITIAL EXPERIENCE」は直訳で「初体験」なんです。そのまんま。
なぜか5話目は社視点になりました。ちょっと新鮮(笑)
ヒカルがヘタレですみません…。
でもヘタレなヒカルも好きです…。エヘ
にしてもノーマルCP(?)のエロはかなり書くの恥ずかしいです。
ホモの方がまだマシ!><(それもどうかと…)
でもこれも数回書くと慣れちゃうんでしょうかね…・。
慣れって怖いわ〜。