●INITIAL EXPERIENCE 3●


「何してるんだ…?」

オレの方をじっと見つめながら塔矢が聞いてきた。

「何って…その…夜這い」

少し小さな声で答えると、塔矢が少し頬を赤めた。


「どうぞ…?」

「あ、あぁ…」

丁寧に招き入れてくれた塔矢の様子を見て少し安堵した。

良かった…。

「ふざけるなっ!」

とか言われて追い返される可能性も高かったから―。

後から部屋に入ったオレが戸を閉めた。

この部屋…鍵がついてればいいのに―。

そしたら絶対逃がさねぇのに…。

今夜こそ―。


戸を閉めると僅かにあった街灯の光が更に薄くなった。

でも目は既に暗闇になれているから平気だ。

布団の上に腰を下ろした塔矢に近付いて――抱き締めた。

お互いすごくドキドキしてるのが分かる。


「はぁ…」

深呼吸して、右手で後頭部から腰のあたりまでをゆっくり撫でてみた。

少しビクッとしたみたいだが…塔矢に嫌がってる様子はない。

オレの背中に手を回して、おとなしく抱き付いている。

よしっ、今日は大丈夫そうだ…。

同じ右手で今度は顎を掴み、ゆっくり唇を重ね始める―。

最初は触れるだけ…。

徐々に深く、何度もついばんで、隙間からゆっくり舌を入れた―。

「ん…っ―」

歯をなぞって、かすかに浮いている塔矢の舌に絡めた―。

お互いの唾液が混じりながら―深く交わる度に音を発ててるのが何ともイヤらしい感じで…それがまた堪らない―。


「―…は…ぁ…」

少し離すとその唾液がお互いの唇を伝った。

もう一度しっかり抱き締めて――耳元で囁く。

「―…いい?」

塔矢の方も更にキツく抱き締め返してきた。

それは承諾の意味を表す。


付き合いだして半年。

ようやくまた一歩進むんだ―。

塔矢を布団に押しつけながら、その幸せを噛み締めた。



――始まりは忘れもしない去年の11月24日。

「好きだよ…」

と、先に告白したのはオレ。

でも真っ赤な顔をしたオマエはすぐに小さな声で

「僕も…」

と笑って返してくれた。

出会った瞬間からお互いの事しか見えてない人生を歩んできたオレらは、もう既知だった気持ちを敢えて口に出した。

その瞬間から晴れてお付き合いが始まったんだ。

お父さん子の塔矢はすぐに両親にそのことを伝えたらしい。

その晩に電話があって、次の日休業日だった囲碁サロンに呼び出された。


「私と一局打ちなさい」


塔矢先生と打つのは三回目。

小6の時に数手、新初段シリーズ、そして今回。

でも本当は先の2回は佐為が打った。

事実上の初対決だ。

塔矢を懸けての―。


アイツが見守る中、結局3目半足りず負けてしまった。

さすが元五冠。

一筋縄ではいかなかった。

でも内容は悪くなかったから、付き合うのは許してくれた。

ただし条件付き。


「22歳までにタイトルを1つ以上取ること」


先生が初めてタイトルを取ったのがその歳だったらしい。

22と言わず10代で取ってやる…!

それと「アキラを大事にすること」。

そんなの当然のことだ。

ずっと一生大事にする。

幸せにしてみせる。

交際を許してくれた後、すぐに塔矢は抱き付いてきた。

父親の目前で。

面白くないという顔をした先生はすぐに席をはずしてくれて、オレ達は二度目のキスをした。


付き合い出して半月。

すぐに第一のイベントがやってきた。

12/14。

塔矢の15歳の誕生日。

その日はお互い仕事が入ってしまい、夕方から落ち合うことにした。

時間が時間だったからクリスマス用のイルミネーションの中、プレゼントを渡すことしか出来なかった。

それでも

「キミが祝ってくれただけで嬉しい―」

と飛び切りの笑顔を向けてくれた。


次のイベントは12/24――クリスマス・イブ。

そして年越に初詣。

年末年始、先生達は海外だったから、代わりに全部オレと過ごした―。

そして2/14――バレンタイン。

3/14――ホワイト・デー。

3/18――卒業式。

そして4月から正式な社会人入りを果たしたオレ達。

まだほんの1ヶ月前のことだ。

付き合って半年。

これからもっともっとたくさんコイツと思い出を作りたい。

今日のこの時間もその一つ。

ついに初めて体を重ねるんだ―。


パジャマのボタンを1つ1つ丁寧に外しながら、首筋に――暴かれてきた白くて綺麗な肌に――キスをする―。

塔矢はぎゅっと目を瞑ったまま、右手でオレの髪を掴んでいた。

左手の甲で口を隠しながら―。

ブイネックの服を着る度に半分見えていた鎖骨が今は丸見えだ。

なぞりながらゆっくりキスを中央にずらしていく―。

「―…あ…」

胸にまで降りて行った唇と、刺激を与え続ける手の動きに感じてか声が漏れてきた。

膨らんでいるその胸に優しく触れると指が埋まる。

何これ…。

柔らけぇ…。

塔矢の胸は決して大きい方じゃない。

見た所Bぐらいか…。

そりゃ大きいにこしたことはないが、それよりも持ち主の方が重要だ。

塔矢の胸。

そう思うだけで触れる喜びを噛み締める。

きっと他の誰の胸よりもオレにとっては重要だ。

塔矢のだったらたとえAだろうがAAだろうが構わない。

そういや冴木さんが彼氏が出来た女の子は胸が大きくなるとか言ってたな…。

それは自然的や感情的なものじゃなくて、単に「彼氏に揉まれるから」だそうだ。

ということは…オレが揉めばこの胸も大きくなるのかな…?

少し唾を飲み込んで、恐る恐るゆっくり包んで外側から力を入れた。

「―…んっ…」

微かな声を漏らした塔矢の顔に目をやると、更に頬が真っ赤になって―手を握り締めて口を押さえていた。

可愛い…。

硬くなった先端も弄りながら、周りに口付けていく―。

「―…ぁ…」

先端自体にも唇を押しつけて、舌で転がしながらついに吸ってしまった―。

たぶんこの行為は14年振りぐらいだ…。

母親のに触れて以来―。

もちろん覚えてないけど…塔矢の子供はこんな風にコイツの胸を吸えるのかな…。

毎日…何回も―。

…ちょっと羨しいな。

当たり前のことに嫉妬を及ぼして、オレも吸える機会に出来るだけ吸っておこうと何度も弄り回していたら

「進、藤…もう、離せ―」

と荒れた呼吸で塔矢に懇願されてしまった。

「イ・ヤ・ダ」

やめろと言われたら更にやりたくなるのが男の性だ。

それでも涙目で髪をぐいぐい引っ張ってくる塔矢が少し可哀想になって、胸はこのぐらいにして次に進むことにした。









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