半年前―――縁談話ばかりもちかけられて困り果ててた僕に、進藤がいい断り方を教えてくれた。
「彼氏いるからって言えば?」
彼はいつもそうやってその手の話から逃げてるらしい。
だから、僕もそう答えてみた。
でも、当然のように
「誰と?」
と返された。
誰とって言われても……
「進藤…と」
しつこい記者や後援会のスタッフに思わず嘘を言ってしまった。
まさか一気に噂が広まり、今度は反って結婚を攻め立てられるなんて思いもしないで―――
「…ごめん」
謝る僕に進藤は
「んー…まぁ言っちゃったものは仕方ないよな」
と諦め半分で承諾してくれた。
「本当にいいの?僕なんかで…」
「ん…いいよ。オマエと結婚したら、わざわざ時間作らなくても毎日打てるしな」
それって『囲碁婚』てことか…?
案の定、夫婦になっても一緒に住んでるってだけで、碁以外に接点はなかった。
ちょっと寂しいと思うのば僕だけなのかな。
新婚生活って意外とこんなもの?
もう少し……キス、とか、あってもいいのに…。
夜だって……初夜に
「一応しておくか」
みたいな感じで一度結ばれたきり…。
あれから三ヶ月経つけど二度目はない。
だから今朝の
『オレより先に寝るなよな。ちょっとは構えっての』
という、この台詞はどういう意味なんだろうかと思う。
期待してもいいのかな…?
「…なぁ、アキラ」
「え?」
「オレらの結婚……どう思う?」
夜10時―――お互いお風呂に入ってパジャマに着替えた後、寝室の布団の上で僕たちは向き合っていた。
「どうって……」
「確かにさ、碁の面では充実してるよな。オマエと結婚して毎日打つようになってから、格段に戦績上がったし」
「うん。それは僕もそう思う」
「でもさ、夫婦としてはどうなんだ?て思うんだよな」
「…うん」
「アキラはこのままでいいと思う?」
「…思わない」
「じゃ、何が足りないと思う?」
そりゃあ…スキンシップ?
「何が足りないかオレが言ってもいい?」
「うん…」
「足りないって言うか、もう我慢の限界なんだよな。オレ、もっとオマエと……したい」
「何を?って聞いたら…怒る?」
「怒る。罰として今夜寝かせねーからっ」
肩から一気に体重をかけて押し倒してきた―――
あ…どうしよう。
嬉しい。
我慢してくれてたんだ?
僕がいつも先に寝ちゃうから?
実はキミに相手にされなくてふて寝してました…なんて言ったら怒るかな?
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