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京田さんと付き合い始めて8ヶ月。

もうすぐ私の16歳の誕生日がやってくる。



「何かプレゼントの希望ある?」

「……特に。何でも嬉しいです…」


そう返事をした私だけど、本当は欲しいものが一つだけあった。

でも、それを口に出す勇気はまだなかったのだ――

 

 

 

 



誕生日の5日前の土日、私は初めて彼の部屋へお泊まりに行くことにした。

もちろん親には内緒だ。

両親が揃って王座戦で留守で、妹も友達の家へパジャマパーティーに行ってしまったのだ。

こんなチャンスを逃す私ではない。

 


ピンポーン


「いらっしゃい、進藤さん」

「お邪魔します…」


いつも以上にドキドキしながら中に入る。

京田さんがコーヒーを入れてくれたので、まずはそれに口付けた。


「実はまだ進藤さんの誕生日プレゼント買えてないんだ」

「え?」

「後で一緒に買いに行かない?」

「…分かりました」


コーヒーをいただきながら、取り留めないことを駄弁って、少しキスしてイチャイチャして。

夕飯を食べに行くついでに買い物に行くことにした。

(いや、逆だ。買い物ついでに夕飯を食べるのだ)


彼が私を連れて来たのは、有楽町駅のすぐ近くの大型ショッピング施設だった。

そこの1階に入ってるジュエリーショップ……

 

 


……え?

 

 


「いらっしゃいませ」


京田さんがいくつか選んだ候補に中から、私が最終的にデザインを選んで。

そして店員さんに左手薬指のサイズを測られる。

包装してもらってる間、私は一つの疑問を京田さんに投げかけた。


「…どうして分かったんですか?私が欲しいもの」


私は何でも嬉しいと彼に言った。

でも本当の本当は――指輪が欲しかったのだ。

まだ付き合って8ヶ月。

重いと思われたら嫌で、口には出せなかったのに……


「んー、俺の勘…と言いたいところだけど、本当は聞いたんだ」

「誰にですか?」

「西条君」

 



――え?

 


「この前偶然対局が同じ日にあって、昼食一緒に食べたんだけど…」


その時に私の誕生日プレゼントの話になったらしい。


「西条君は金森さんにどういうものあげてるの?」

「まぁ色々ですけど…、進藤が欲しいものなら俺分かりますよ」

「え?本当?」

「奈央の初めての誕生日プレゼントで悩んでる時、俺、進藤に相談したんです。そしたらアイツ…」




『え?そんなの指輪一択じゃない?』

『いきなり指輪って…、重ない?』

『そう?私は彼氏が出来たら絶対貰いたいけど…』




「――て言ってましたからね!2年前の話ですけど、今でも絶対進藤ならそう思ってるはずです」

「…なるほど。指輪かぁ…」


でもサイズも好みも分からないから、一緒に選ぼうと思って私を今日ここに連れてきたらしい。

 


(……嬉しい)

 


夕飯を食べて、彼の部屋に戻って来た私達。

誕生日当日はお互い対局日で一緒に祝えないから、京田さんは今プレゼントをくれた。

左手薬指にそっと…、さっき買ったばかりの指輪を嵌めてくれる。


「もちろん、いつかはもっとちゃんとしたのを贈るけど…。それまではこの指輪をしてて貰える?」

「はい…、ありがとうございます」


キスをして、そのまま体を合わせた私達。

最中に裸の私が身につけていたのはこの「永遠」を意味する指輪一つだけ。


永遠に、ずっと彼と一緒にいられますように――

 

 


END


さすが精菜の11歳の誕生日に指輪を贈ったお兄ちゃんの発想は健在だわ…。私も欲しいよーー!!(by 彩)

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