●if I●
京田さんと付き合い始めて9ヶ月。
「明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
「よろしくお願いします」
私の家の最寄り駅で待ち合わせた私達。
まずはお互い新年の挨拶をしてみた。
「会うのはクリスマス以来だな」
「そうですね」
もちろんクリスマスは一緒に過ごして、昼間からイチャイチャしま
でもその後は父の研究会も年末年始休暇に入ったので、彼が家に来
私は私で年賀状やら家の大掃除やらおせち作りやら、新年の準備と家族行事で
元旦も双子を含め家族水入らずで過ごして初詣にも行き、昨日も両
「京田さんも実家に帰られました?」
「うん。まぁ実家に帰ったというか…、家族と一緒に旅行に行って
「へぇ…、どこに行かれてたんですか?」
「サンモリッツ」
「??」
神社に到着し、一緒にお参りをする。
手を合わせて私が祈ることは毎年同じだ――
――今年も満足のいく碁が打てますように――
それと今年はもう一つ……
「何て願ったの?」
「秘密です。京田さんは?」
「俺も内緒」
ものすごく気になったけど、深掘りはやめておく。
ただ、私と同じ願いだったらいいなぁと思った。
――京田さんとこれからも一緒にいられますように――
お参りを終えた私達は手を繋いで神社をあとにする。
握られた左手。
その薬指には誕生日に彼から貰った指輪をはめている。
普段は恥ずかしいのでもちろん自分の部屋の机の引き出しに大事に
「これお土産」
「ありがとうございます」
彼の部屋に着くと、さっき言ってたサンモリッツのお土産をくれた
私の好きなリンツチョコだった。
入れてくれたコーヒーのお供に早速一緒にいただく。
「旅行の写真とかは?」
「あるよ」
彼が携帯で撮った写真をスライドで見せてくれた。
一番に目に入って来たのは壮大な雪山。
そしてご家族と一緒にホテルで過ごす様子や、スノーボードを持っ
インドアな私の家では考えられない世界がそこには広がっていた。
「そういえばサンモリッツってどこなんですか?」
「スイス」
「スイス…」
だからお土産がリンツチョコなのかと理解した。
「驚きました。電話では何も言ってなかったから…」
会えない間も、何度か電話はしていた私達。
もしかして真夜中にかけてしまってた時もあったんじゃ……
「俺も行くつもりはなかったんだけどね…、家族がうるさくて。で
「そうなんですか?」
どう見ても育ちがいい京田さん。
昔から家族旅行もたくさんしていたらしい。
けれど、友達に話していい顔をされたことがないという。
「俺の通ってた小学校って、結構裕福な子が多かったんだけど…」
それでも夏休みに何してたと聞かれて、
「地中海クルーズしてそのまま大西洋を船で渡ってニューヨークの
と真っ正直に答えると、変な顔をされたのだとか。
それ以来隠すようになったらしい。
「年末は何日に出発したんですか?」
「27日かな。で、昨日帰って来た」
ということは……7日間ということになる。
スイスまでの距離を考えたらかなり弾丸…?
「家族はまだ向こうにいるんだけどね。俺だけ先に帰って来たから
「あ、そうなんですね…」
「俺にとっては進藤さんとの初詣の方が大事だから」
「……え?」
もしかして、もしかしなくても、今日の初詣の為にわざわざ旅行を
ものすごく申し訳ないような……ちょっと嬉しいような……
「家族もいいけど、やっぱり進藤さんといる方が100倍楽しいし
「それは…、私も同じかもです」
恋人と過ごす時間は何物にも代えがたい。
永遠に続いてほしい、このまま時が止まればいいのにと思う時だっ
「来年の年末年始は進藤さんと過ごしたいな…」
「私もです…」
彼の顔が近付いてきて――私達は今年初めてのキスをした――
もちろんそれだけでは足らず、今年初めての性行為も行った私達。
事後にベッドでまどろんでいると、彼が私の指先にキスしながら…教えてくれる。
「さっきは内緒って言ったけど…」
「え…?」
「俺がした願い事は一つだよ。進藤さんとずっと一緒にいられます
「京田さん…」
同じ気持ちだったことがすごく嬉しい。
私はぎゅっと彼の胸に抱き着いた――
「今年は…二人きりの時は下の名前で呼んでもいい?」
「はい…、もちろん。いくらでもどうぞ…」
「佐為…」
早速呼んでくる彼。
「好きだ…」
「私もです…」
私達はもう一度キスをして、もう一度体でも愛を確かめ合うことに
―END―
私にもその写真見せなさいよー!スノボー京田さんだなんて絶対カ