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京田さんと付き合い始めて4ヶ月。

登校日に学校に行くと、

「進藤、Wデートせぇへん?」

と西条が話しを持ち掛けてきた。


「どこで?」

「暑いから水族館とか?」

「別にいいけど…」

「ほな、明日は?」

「ちょっと聞いてみる」


京田さんにLINEすると『いいよ』とすぐに返事が返ってくる。


「ほな決まりな」

「うん」

 

 

 

 


翌日朝10時。

待ち合わせ場所の品川駅に京田さんと二人で到着すると、既に西条も金森さんも来ていた。

金森さんとはデパート以来だ。


「よろしくね。天気よくて良かったね」

「よろしくお願いします。でも暑いですね」


早速4人で水族館まで移動し、見て回ることにした。

照明がすごく幻想的で、私が想像していた水族館とまるで違っていた。

基本は私と金森さんが一緒に見て回って、京田さんと西条が付いてくるという形だった。

もちろん混んでる場所では逸れないようお互いの彼氏と手を繋いだり。

イルカショーもペンギンパフォーマンスもとても面白かった。

 


品川駅に戻ってきて駅ビルのレストランで遅いランチをいただく。


「京田さんと上手くいってるようで安心したわ」

と西条に言われる。


「どうして?」

「中学の時は進藤見てて可哀想やったから」

「……」


どこからどう見ても両想いなのに、本因坊の過保護のせいで一向に進展しなかった中学時代。

俺だけ恋人おるん何か申し訳ないなぁ…と西条はずっと思っていたそうだ。

西条は中11月から金森さんと付き合っていた。

確かにしょっちゅう惚気てくる彼に、ちょっと嫌な気分になってたのも事実だ。


「奈央は今年受験生やけん、冬休みはたぶん出かけれんし。急にWデート誘って悪かったな」

「ううん。誘ってくれてありがとう。すごく楽しかった」

「また奈央が合格したらどこか行こな」

「そうだね」

 


ランチの後はせっかく棋士が4人集まってるんだからと、碁会所で打つことにした。

最初に京田さんと打って、西条と打って、最後に金森さんと打つ。

帰ろうとしたら碁会所のマスターになぜか対局を求められてしまったけど。

進藤女流立葵杯ですよね、と。

私がマスターと打ってる間、他の3人は他のお客さんに指導碁をしてあげていた。



西条達と別れて、京田さんと帰路につく。


「マスターもなかなかいい手を打ってきて面白かったよ」

「俺の方も。やっぱり指導碁は楽しいよ」

「でもまだちょっと打ち足らないかな。京田さんち寄ってもいいですか?」

「いいけど…、打つ前に先に少し甘い時間が欲しいかな」


誘われて途端に私の頬はほんのり赤くなる。

夕方になってもまだまだ暑さが厳しい8月。

私達の初めての熱い夏もまだ始まったばかりだ――

 

 


END


Wデートとか羨ましすぎでしょ!私もしたい!(by 彩)

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