if side:怜次J 番外編〜楓視点@〜





私が細川塁斗君に初めて会ったのは、小学校1年生の時。

習い事の一つとして親に入れられた将棋クラブに、彼はいた。

当時からものすごく強くて、大きな大会の低学年の部で優勝とかもしていた彼。

憧れていた。

それが恋に変わったのはいつからだろう。


とにかく塁斗君に近付きたくて、私も将棋にのめり込んだ。

彼が研修会に通うというので、私も通うことにした。

彼が海王中を受験するというので、私も受験した。

そして――


「好きです」

と長年の想いをようやく私が口にしたのは、中学2年のバレンタインデーだった。

先月、私は研修会でB1に上がり、晴れて女流棋士の2級になれたのだ。

女流棋士になったら、彼に告白しようってずっと思っていたのだ。


「……ちょっと考えさせて」

ガーン。

返事は保留にされた。


当時、塁斗君は奨励会初段で、あと2連勝すれば二段に上がれるというところまで来ていた。

彼女なんて作って浮かれてる場合じゃなかったのかもしれない。

でも、翌週の奨励会で2連勝して無事に二段に昇段した彼に、私は校舎裏に呼び出される。


「この前の返事だけど…」

ゴクリ

「いいよ…、付き合っても」

「…本当に?」

「オレも楓のこと…、好きだったから…」

「…本当に?」

涙が出た。


でも

「本当はプロになるまで彼女なんて作らないつもりだった」

と彼は言う。

でも同じクラスの囲碁のプロ棋士である緒方怜次君が、恋人が出来ても相変わらずの活躍を見せている。

むしろ、今まで以上に。


「だからマイナスになるわけじゃないのかな…って」

考え方を改めてくれたらしい。

そして無事二段に上がれたから、決心してくれたらしい。


(ありがとう緒方君…)



それからの私達の交際は順風そのものだった。

デートも将棋の勉強の邪魔にならない程度にたくさんした。

キスもデートの度にしてる。

でも、その先は――?


「じゃあ…、オレが三段に上がったらな…」

「うん…!」


そして付き合い始めて約1年後、塁斗君が三段に昇段する。

(やったーーvv)


でもそれ以降、彼は何故か私を避けるようになった。

デートの約束をしようとしても、「勉強があるから…」と断られてばかり。

LINE
も既読スルーが増えた。

既読すら何日も付かない時もあった。


「私達…、もうダメなのかも…」

「楓…」

友達の彩に私は泣きついた。


「じゃ、Wデートしよう?」

「え…?」

「細川君も、他の人が一緒なら無下に断れないんじゃないかなぁ?

「……うん。ダメ元で聞いてみる」


ドキドキしながら私は彼にLINEした。

『今度の日曜日、Wデートしない?彩と緒方君と一緒に』

ダメ元だったけど、今回は何故かすぐに既読になり、しかも

『いいよ』

OKしてくれたのだった。

(やったーーvv)




そのWデートを境に、私達の関係は何故か修復される。

元通り。

ううん、元通り以上かもしれない。

だってだって、塁斗君についに

「オレの部屋に遊びに来ない?」

と誘われたからだ。

しかも

「親も仕事でいないから」

と――


(きゃーーー///

 

 

 

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