●GO 1●
「あら、アキラさん。浴衣?」
「うん…どっちの色がいいかな?」
「そうねぇ…どっちでもいいけど帯は赤の方が似合うんじゃないかしら。誰かとお祭り?」
「うん…進藤と花火」
「あら!」
僕が進藤に
「好きだ」
と告白されたのは、つい先日のことだ。
ずっとライバルだった彼からのいきなりの告白。
もちろん最初は戸惑った。
彼とは一生ライバルでいたい。
男女の付き合いをすることで、もし今の僕らの碁に何らかの悪影響が起きてしまったら……
「もし付き合ってくれたらさ、何よりオマエを優先してやるよ」
「…本当に?」
「うん。デートでも打とう。今まで一緒にいられなかった夜も、付き合ったら好きなだけ一緒にいられるし。打って打って打ちまくろうぜ!」
「うん…!!」
今思うと……僕は碁を餌に釣られちゃったのかな?
でも、彼と前以上に打てる。
それは僕にとって何より嬉しいことだから。
「はい、完成したわ」
「ありがとう」
お母さんに着付けとヘアメイクもしてもらった後、僕は携帯がチカチカ光っているのに気がついた。
メール……進藤からだ。
『あと5分ぐらいで着くから』
というメールが5分前に届いていた。
じゃあそろそろか…。
「行ってきます」
「ええ、進藤さんによろしくね」
お母さんに見送られて玄関を出ると、ちょうど進藤の車が門の前に着いたところだった。
「お待たせ、塔矢」
「進藤!」
「浴衣なんだ?すっげー可愛い!」
「あ…ありがとう」
進藤が助手席のドアを開けてくれた。
実は今日は付き合い始めてから初めてのデート。
改めて意識すると何だかドキドキする。
「楽しみだよな〜花火♪」
「そうだね。今年はまだ見てなかったから嬉しいよ」
「な、終わったらオレの部屋寄ってくだろ?」
「え?」
「打ちまくろうぜ♪」
「うん…!」
ああ…進藤と付き合うって何て素敵なことだったんだろう。
もう恋人同士だから一晩中彼の部屋にいても誰からも何も言われない。
一晩中打って打って打ちまくれる。
どうしてもっと早くこんないい案に気付かなかったんだろう。
進藤も、もっと早く告白してくれたらよかったのに!
「わぁ…すごく綺麗」
会場に着くと、ちょうど花火が始まったところだった。
すごい人だから、はぐれないように進藤が僕の手をしっかりと握りしめてくれる。
…大きい手だ。
キミと僕…いつからこんなに体型が変わってしまったのかな。
昔は身長も僕の方が勝ってたのに。
今は下駄を履いても彼の耳ぐらい。
「なに?どした?」
「ううん…。キミの身長の伸び具合に感心してただけ」
「いつと比べてんだよ〜。オレ、もう5年ぐらい伸びてないぜ?」
「ふぅん…」
「うわ、今の見た?すっげー仕掛け花火!」
「綺麗だね」
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