●GO 2●
一時間の花火のショーはあっという間に終わってしまって、僕らは再び車に戻った。
さ、次はお待ちかねの碁だ♪
わくわくドキドキそわそわと、花火前以上にテンションが上がっていく僕。
それとは裏腹に、進藤はどんどん大人しくなっていった。
険しい顔。
彼がいつも大一番前にする表情だ。
そこまで本気モードになってくれるなんて…!
「…なぁ、塔矢」
「え?なに?」
「何でオレが今頃になってオマエに告ったと思う?」
「そうだよ、もっと早く告白してくれたらよかったのに!そしたらもっと早くから打ちまく―――」
僕の言葉は進藤のキスで遮れた――
…え?キス?
ああ…本当だ…キスだ。
僕、今…キス…されてるんだ…。
恋人なんだからこれも当然……?
「…ん…っ、ん…ん…っ」
長いキスだった。
塞がれた口の中で、僕らは舌で格闘していた。
右から攻めてみたり左から攻めてみたり、吸われて、なぞられて、絡めあって――
「――ん……はぁ…っ」
「はぁ……は…」
ようやく離された後、進藤が僕の目をジッと見つめてきた。
「オレ…ずっとオマエのことが好きだった…」
「…ずっと?」
「うん、ずっと。中学の時から…」
「そうなんだ…。ごめんね…全然気づかなかった」
「いいよ。言わなかったオレも悪いし…」
進藤の手が僕の頬から…首へと滑るように下りていった。
浴衣の衿で手が止まる。
「塔矢は…オレのこと好き?」
「え?うん…」
「じゃあオレの碁とオレ自身……どっちが好き?」
「………」
僕は口を開けることが出来なかった。
『碁』って言ってしまいそうだったから。
きっと彼は傷付くだろう…。
「言わなくても分かってるけどな。オマエが好きなのはオレの碁だろ?」
「………ごめん」
進藤がフッと笑ってきた。
「いいよ…そんなオマエだって分かっててオレは告白したんだから。でもって、オレはそんな塔矢が好き。碁のことしか考えてない塔矢アキラが大好き」
「…馬鹿にしてる?」
「尊敬してる。でもって愛してる」
彼の腕が僕を抱きしめてきた。
こんな碁バカな僕を受け止めてくれる大きな懐を持った彼が――
「オマエが好きだから…オマエを一生オレの碁の虜にしたいんだ」
「もうずっと虜だけど…?」
「当たり前だって。オマエの目が他に移らないよう、ずっと死ぬもの狂いで打ち続けてきたんだからな」
「……」
「でも、ちょっと最近疲れてきててさ…。休息取らせてほしくて…」
途端に、彼の体の重みが一気に増した。
僕の体はシートに一直線に落ちていって、これはいわゆる押し倒された体勢。
上から僕を見つめる進藤の目が…限界を訴えていた。
熱も帯びていて。
今にも涙が零れそう……
「ごめん…塔矢。オレ、一人じゃもう処理しきれなくて…」
「うん…」
「オマエで癒されたい。オマエはこんなの迷惑だって言うかもしれないけど…」
「言わないよ。だって僕はキミの彼女だろう?恋人が疲れてる時は癒してあげるのが勤めだ」
「塔矢ぁ…っ」
もう限界らしい彼。
ずっと一人で頑張って、ずっと僕を虜にする碁を打ち続けてくれた彼。
ありがとう。
僕はお礼も兼ねて、一晩かけてそんな進藤を癒すことにした。
車の中では少しだけ、部屋に戻ってからじっくりと――
「…あ…ぁっ、…ぁ…ん…」
初めてのセックスなのに容赦なくて。
余裕もなくて。
ずっと僕を抱いて『好き』を進藤は囁き続けていた――
「塔矢、打とうぜ」
「うん…!」
翌日――長年積み重ねていた想いも疲れも全部吐き出した彼は、すっきりした表情でまた僕のライバルに戻ってくれた。
でも、僕はキミみたいに切り替えが早くないんだけど…。
気を抜くと今にも昨日の情事を思い出して、茹だってしまいそうだ。
でも、進藤も同じだったみたい?
たまに目が合っては赤くなって、すぐに逸らしてきていた。
「…オレ、大一番の後とか…結構毎回ぐったりなっちゃうんだよな…」
「ふ…ふぅん。まぁ…普通そうだよね…」
「その時また…オマエのとこ行ってもいい?ダメ?甘えすぎ?」
「いいよ…別に。待ってる…」
彼の碁だけでなく、彼自身もきっと好きになれる。
そんな予感がした夏――
―END―
以上、たまには碁を頑張ってる二人(当サイト比)が書きたくて書いてみた話でした〜。
アキラさんは碁が何より大好き。
ヒカルはそんなアキラさんが何より大好き。
アキラさんの目をずっと自分に向けさせるために碁を頑張ってるヒカルって一途でいいなぁ…。
でもって「もう駄目!無理!塔矢〜〜っ!!」とアキラ自身に弱音を吐くヒカルもいいなぁ…。
真面目なアキラさんは「僕は進藤の彼女なんだから…!」と、これからも癒してあげることでしょう。
自分の為に頑張ってくれてるんだしね☆
ああ…にしても絶対この二人、エッチ初めて同士だわ…。萌える…(笑)