●FORE BUTTOCKS 1●


最近気付いたことがある。

今まで表情や石を掴む指ぐらいしか見る必要がなかったから普通に気にも止めてなかったんだけど、そのちょうど中間にある……胸。

塔矢の胸。

そう、胸だ。


かなり………デカくねぇ?



「……なに?」

じーっと凝視していたら、塔矢が不思議に思ったのか、訝しげな目をして聞かれてしまった。


「オマエの胸さぁ…ジャマじゃねぇ?」

「は?ああ…これね。確かに邪魔と言えば邪魔かな。碁打ちに胸なんか必要ないからね」

「昔はそんなにデカくなかったよな?」

「んー、ここ2・3年かな。中学出たあたりから急に大きくなりだした」

「ふーん…」


パッと見ではEか…Fぐらいか?

すげぇな。

グラビアアイドル並み。

まぁ塔矢も碁界のアイドルだから、アイドルには違いねぇけど…。

にしてもすげぇ重そう。

きっとこの胸がペッタンコになったら、体重は2キロは減るな。

いや、3キロ?

4?

ああ、でもペッタンコにするのは勿体ないかも。

この細さでこのデカさのアンバランスさがいい。

きっともっと胸の開いた服着て屈んだら谷間とか出来まくりの見えまくりなんだろうな〜。

もう対戦相手の男は碁どころじゃなくなるな。

まさに悩殺作戦?

まぁ塔矢には必要ないかもしれねぇけど―。


「胸って小さくする方法ないのかな?」

塔矢が溜め息を吐きながら自分の胸を両手で掴んだ。

その手に収まらずにはみ出して、指の隙間から見えるその贅肉の塊にウッとなる。


やべぇ…―


「だ、ダイエットしたら胸から小さくなるっていうけどな。でもオマエ元々痩せてるからしない方がいいぜっ」

「うん。これ以上体重が減ったら対局中に倒れそうだ」

もう一度溜め息を吐いて胸からパッと手を離した。

その衝撃で揺れてるのがまた何とも言えないほど目に毒だ。

あー…でも視線を逸らしたくない。

ずっと見ていたい。

むしろオレも触りたい。

きっとすげぇ柔らかいんだろうな…。


はっ!

ダメだダメだ!

今は碁盤に集中しねぇと!

まだ対局中だ!

あー…でもこの対局、もう終局図見えてるしなぁ…。

オレの1目半勝ち。

塔矢はまだネバってるけど、これだけ差がついたらもう巻き返しは無理だって。

まぁせいぜい考えてくれ。

オレはその間オマエの胸を堪能させてもらう。

畜生…。

この対局賭け碁にしときゃあ良かったぜ。

そしたら勝ったご褒美に触らせてもらうのに。

うっわ…。

オレってセクハラ親父みてぇ…―



「はぁ…。ありません」

「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


ようやく塔矢が観念したらしく、負けを認めた。

でもオレは勝ち負けなんかどうでもいい。

それより今はものすごくその胸が気になる。

触りたーい。

揉んでみたーい。


「一手目から並べて検討しようか」

「そうだな…」


検討なんてどうでもいいし!

それより胸だ、胸。

いいよな〜この胸に触れる奴。

塔矢の彼氏?

まぁいないと思うけど。

こいつ碁命だし。

でもいないならオレが触ってもいいんじゃねぇ?

あー…何か触る理由とかないかな。

直球で言ってみよっかな。


「触らせて(語尾ハート)」

って。


んー…殴られる確率30%。

無視られる確率30%。

冗談にされる確率30%。

その他もろもろ拒否される確率10%。


うわっ。

成功率0%じゃん!



「……した方が良かったと思うんだけど、進藤はどう思う?」

「え?なに?」

「…聞いてなかったのか?」

「ご、ごめん…」

「……」

塔矢がオレを思いっきり睨んできた。

ごめん。

マジごめん。

検討より胸に集中してました。


「…さっきから僕の胸ばかり凝視するのやめてくれる?」

「…ごめん」


やばっ。

バレてた…。


「僕だって好きでこんな大きさになったんじゃないんだ。出来れば中学時代のCカップに戻りたい…」

「何言ってんだよ!最高じゃん!今の方が!」

「そうかな…。邪魔だし重いし肩は凝るし可愛いブラジャーはないし……いいことなんか一つもないんだけど」

「でも男は大きい方が嬉しいぜ?」

「ふーん…キミも?」

「当たり前じゃん!今だって触りたくて仕方ねぇもん!」


あ。

言っちゃった…。


「そう…なんだ」

塔矢が途端に真っ赤な顔になって下を向いてしまった。



「………」

「………」



な、何なんだこの沈黙は…。

オレから破るべき?

何を言えばいいんだ?

やっぱり直球でいっとくべき?


「…な、塔矢。ちょっとだけ……触らせて?」















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