●MY DOUBLE 2●
「ねぇ…アキラ。あなたって進藤プロのことどう思ってる?」
従姉のミナミが昨日突然やってきて、突然僕にそう尋ねてきた。
昔から外見だけでなく…考え方や趣味や好みまで何もかもが僕に似ている彼女。
「私一目惚れなの、彼の棋譜に。もしかしてアキラもそうなんじゃないかと思って」
「そうだね…進藤の棋譜というか棋力は、僕にとって魅力的だよ」
僕も一目惚れだったのかもしれない。
彼に出会ってから、もう彼のことしか考えられなくなった。
次第に棋力だけじゃなく、彼自身も好きになっていった。
しかも嬉しいことに彼も…僕のことが好きだと言ってくれた。
一応付き合ってる僕ら。
でも……男同士だ。
一生今の状態が続くなんてことは有り得ない……
「進藤プロに会ってみたいのよね。アキラ、何とかならない?」
「進藤なら…明日ここに打ちに来る予定だけど」
「本当?!ね、私もいちゃ駄目?邪魔?」
「…いいけど」
「でも私、進藤プロにアタックしちゃうかも。アキラ…いい?」
「……」
進藤は僕のことが好きだと…いつも言ってくれる。
すごく嬉しいよ。
僕も…キミのことが大好きだから。
そして僕にそっくりな彼女なら…きっと進藤も彼女に惹かれるだろう。
いつかは終わりにしなくてはならない僕らの関係。
他の女性に取られるぐらいなら、まるで僕の分身のようなミナミの方がまだ譲れる…気がする。
「…いいよ。じゃあ明日…途中で僕は席をたつよ。進藤と二人きりにしてあげる」
「ありがとう!アキラ大好き!!」
「……」
そして迎えた翌日――ホワイトデー。
案の定…僕にそっくりなミナミに進藤は興味を持ったようだった。
トイレだと嘘をついて、約束通り二人きりにしてあげた。
隣の部屋から障子越しに様子を伺ってみる。
「ね、彼女いないなら…私と付き合ってみる気ない?」
はぁ…相変わらずミナミは直球だな。
行動が早い。
僕と同じ…思い立ったら一直線だ。
「えっと…」
困ってる進藤。
でも、声は嬉しそうだ。
少しだけ…胸が痛むのが分かった。
「でもオレら会ったばっかだし…」
「じゃあお互いのことを知る為に一度デートしない?」
「え?あー…どうしよっかな」
「来週とかどう?進藤君の次の休みっていつ?」
「明後日…だけど」
「三連休は?」
「確か…土曜だけ休みだったかな」
「じゃあ土曜ね。どこ行く?」
「え…行くの決定なんだ?」
「駄目?」
「…駄目じゃないけど」
「じゃあ決定ね。楽しみにしてるね♪」
「…はは」
デートの約束をした二人。
ぎゅっと…唇を噛み締めた。
我慢…だ。
これでいい。
後は進藤が僕に別れ話を持ちかけてくるのを待つだけだ――
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