●DIVORCE 3●







「ああ、進藤先生塔矢先生待ってましたよ。先にチェックインしてきて下さい。それと、これが今日明日のスケジュールです」


慌ただしいイベント進行係の人に簡単な説明を受けた後、進藤と一緒にフロントに向かった。

三年前もそうだったね。

一緒に、この通路を通ってロビーに行った。




「お疲れ様でした。進藤様と塔矢様ですね」


手際よくチェックイン作業をしてくれるフロント嬢。


ただ鍵を渡されて―――僕らは一瞬固まった。


「同じ番号…なんですけど?」

「はい。ご夫婦ですので同じ部屋の方がよろしいかと思いまして」

「や…あの、もう夫婦じゃ…」

「え??」


失礼いたしました!と慌てるフロント嬢。

だけどイベントで満室なせいかどうしようかと他のフロントスタッフと相談しだした。



待つこと5分――



「いや…もういいです。同じ部屋で。な?塔矢」

「うん…」


何度も何度も謝ってくるフロントの方々を背に、さっさと部屋に向かい始めた。




「そういえばあの時も同じ部屋だったな…」

進藤が懐かしそうに言ってくる。

「うん…。まさか別れてるなんて思いもしなかったんだろうね」



ガチャ


客室に入るとそこはどこにでもある和風の部屋。

今は机が置かれてるけど、イベントから帰ってくるとそこには布団が敷かれる。

今夜一緒に寝るのか…と思うと少し緊張する。



「やべ、もう始まるな。急ごうぜ」

「うん」











蔵王温泉で開かれた今回のイベント。

三大タイトルを持つ緒方さん、進藤、僕も参加するとあって、イベントは大賑わいだった。

お客さんはもちろん地元の人が中心。

三年前開催の時も来てくれてた人も多く、僕らは訂正するのもだんだん疲れてきて……もう夫婦で通した。



「くくっ…」

と緒方さんに笑われる。

「部屋も同じなんだってな」

「もうどうだっていいです」

「明日の朝やっぱり再婚するなんて言うなよ?」

「……は?」

「どうせ今晩アイツとするんだろう?久々に進藤に抱かれたら気持ちが変わるかもしれないということだ」

「な…っ」


ふざけないで下さい!とその場を立ち去った。


そんな僕の真っ赤な顔を見て、緒方さんが

「よりを戻すに一万」

門脇さんも

「三万かけてもいいですね」

と賭で遊んでるなんて知るよしもなかった。













「やべー山形牛って美味すぎー」


イベント後の食事も終えて進藤がご機嫌に部屋に帰ってきた。

一足先に戻り、温泉に入ってこようと準備をしていた僕は、彼の声にビクッとなる。


「あれ?塔矢今から風呂?」

「あ…うん」

「んじゃオレも入ってこようかな〜」

「……うん」


一緒に大浴場に向かうの……あの時と同じ。

一緒に入っても、どうしても女の方が時間がかかってしまう。

僕が出てくるまで待っていてくれた三年前。

今回は―――




「…お。やっと出てきた」

「………お待たせ」


少し、嬉しかった。

優しい進藤。

僕が大好きだった進藤。

あの浮気は絶対に許さないのは今も同じ。


でも、進藤に恋してるこの気持ちも今も同じ―――














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