●DIVORCE 2●
「美味し〜い」
ミシュランの星がつく有名フレンチレストラン。
幸せそうに食べる彼女の顔を見ると、オレも幸せ。
「ヒカル、大好きだよ」
とレストランを出た後彼女が腕にベッタリと纏わりついてきた。
夕食の前もブランドショップでプレゼントしまくった。
超ご機嫌な彼女をそのままホテルへと連れていく。
「――…あ……はぁ…あぁ…、もっと…ぉ…――」
何回もして、体がスッキリした所でオレはベッドを下りた。
「…あれ?帰るの?」
「明日地方だから朝早いんだ。お前は泊まってっていいから。鍵だけフロントに返しておいて」
「うん、わかった〜」
バタンとドアを閉め、エレベーターに乗り込んだ途端に今日も溜め息が出た。
「はぁ……何やってんだろオレ…」
たかが3つしか違わない子なのに気分は援交。
お金を払って抱かせてもらってるのと同じ。
でも、こうするしかなかった。
普通の相思相愛の彼女なんかいらない。
本当に好きな女は一人で充分。
もっとも、そいつにはフラれちゃったけど…――
「塔矢、オレと付き合わねぇ?」
16の時―――オレは大好きだった女の子に告白して見事ゲットした。
「進藤、結婚しないか?」
18の時―――まさかの彼女からのプロポーズ。
もちろんOKして、オレらは夫婦になった。
そのまま一生それが続くのが当たり前かと思ってた。
今はまだ早いけど、いつか子供も作ろうとか話してたりもした。
だけど20歳の時………オレは大きな失態をしてしまう。
アルコールも入って、ちょっとハイになってたのかもしれない。
飲み屋のお姉さんとのお喋りもすごく楽しくて……
その中の一人が、オレを誘ってきた。
「バレなきゃ大丈夫。奥さんより気持ち良くしてあげる」
塔矢以外の女を知らなかったオレ。
一回ぐらいいいかな…と魔がさした。
「………ごめん」
でも結局バレて、謝って謝って謝って………
その結果が―――離婚だった。
ゴソッとポケットから指輪を取り出した。
大事な大事な結婚指輪。
もう二度とハメることは許されないのに、今でもいつも持ち歩いている。
後悔…してる。
あの夜さえなければ、今、こんな所にはいない。
今頃……塔矢の手料理でも堪能してるはずだった。
はぁ……ともう一度溜め息を吐いて家に帰った――
「――進藤?」
「…え?」
翌日―――オレは地方のイベントを手伝いに行くために新幹線に乗っていた。
聞き慣れた声に顔を上げると―――塔矢がいた。
「キミもイベントの手伝い?」
「あ……うん」
「…横、座ってもいい?」
「うん…」
塔矢が座った途端、ハッと思い出した。
この新幹線にこの隣同士の席、今から行く会場のホテル。
三年前と丸っきり同じだ…。
少し胸が高鳴った。
ただあの時と違うのは………オレらが他人だってこと―――
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