●DISCIPLE 3●
初めて彩ちゃん以外の人に告白されたのは、入段してから半年くらい経った高2の秋だった。
相手は院生の女の子だった。
次に告白されたのはバレンタインデー。
相手は俺のファンだとか言う女の子だった。
そのくらいまでは記憶に残っている。
高3になると、毎月のように誰かに告白された。
もちろん全員即お断りしてきた。
どんなに可愛い子にされても、タイプの子にされても、色気もあるお姉さんにされても、彩ちゃんとの約束があったから断り続けた。
それなのに――
「京田さん……私との約束が重荷になってない?後悔してるんじゃないかなって…思って」
重荷?
後悔?
どうして彩ちゃんはこんなことを言うんだろう。
俺のことを信用してないのだろうか……
「……だったら?」
「え…?」
「俺が重荷って言ったら彩ちゃんどうするんだよ?後悔してるって言ったらどうするんだよ?」
「それは……」
「俺を諦めるわけ?それとも彩ちゃんと付き合うまでのあと2年間、俺が他の奴と付き合うことを許してくれるわけ?」
「…嫌だ、諦めたくない…。他の人とも付き合ってほしくない…」
「じゃあ何でそんなこと聞くんだよ?!」
「だって……京田さん……辛そうだから……」
「辛いに決まってるだろ?!好きな女の子とあと2年も付き合えないんだから!!」
「――え?」
彩ちゃんの顔が真っ赤になる。
もちろん俺の顔も――
「京田さん…私のこと、好きなの…?」
「好きだよ」
「本当に…?」
「彩ちゃんて本当に疑り深いよな」
「だって……」
「…じゃあ本当だって分からせてやるよ」
こんな玄関先で。
先生だって中にいるのに。
聞こえてるかもしれないのに。
俺は彼女の顔に手を添えて――キスをした――
「――……ん………」
告白されて以来、俺は彼女を一人の女の子として、一人の女性として見てきた。
顔も可愛いけど、性格はもっと可愛くて、屈折がなくて、表裏がなくて、正直で、一途で、負けず嫌いで。
実は二次元が好きなとこも、料理がそんなに上手じゃないとこも、全部引っ括めて――好きになった。
本気で好きになったから、2年半待てた。
本気で好きになったから、あと2年待つつもりだった。
「――……は…ぁ……」
唇を離した後、彩ちゃんの体をぎゅっと抱き締めた。
2年半前、棋院の階段で同じように抱擁したことを思い出す。
あの頃より身長も15センチは伸びて、もうすっかり大人の女の人と変わらない。
大きくなったな…としみじみ感じた。
「京田さん……私と付き合ってくれるの?」
「……」
もうすぐ19歳になる男が、14歳の女の子と付き合うことを世間は許してくれるだろうか。
例え世間は許してくれても、進藤先生は許してくれないだろう。
昔言われた言葉が頭を過る。
――オレに勝つまで絶対に認めないからな!――
俺はまだ先生に勝ったことがない。
進藤君と違って、公式戦で戦えたこともない。
まだ最終予選止まりだ。
今の状態で交際することは俺のプライドが許さない。
「……ごめん、彩ちゃん。まだ付き合えない」
「え…?」
「俺まだ進藤先生に勝ててない…」
「それは…そうだけど。お父さんなんて無視しておけば…?」
「そういう訳にはいかないよ。先生は俺の師匠だし、彩ちゃんのことを本気で考えてるからこそ、ちゃんと順を踏みたい」
「でもお父さん三冠だよ…?」
「タイトル取るのは無理かもしれないけど、どれかの対局で勝てるよう頑張るから……あと2年待ってくれる?」
「……結局2年待つんだね」
「ごめん…」
「ううん。京田さんの気持ちが聞けて嬉しかった…。あと2年くらい余裕で待てるよ…きっと」
「ありがとう……」
「16歳になったら、もう一度言うからね。その時にはイエスって即答出来るように強くなっててね…」
「うん――」
最後にもう一度だけ、俺達は約束のキスをした――
翌月曜日。
俺は予定通り家を出て一人暮らしを始めた。
ユニットバスのたった10畳のワンルームの部屋だけど、今の俺には分相応だと思う。
もっと強くなって稼げるようになって、2年後には引っ越ししたい。
彩ちゃんと付き合い出して部屋に呼ぶ時には、もう少しいい部屋に住んでいたいなと思った――
―END―
以上、京田×彩のその後でした〜。
彩も14歳、中2、これを書いてる現在リアルですw(コロナはありません 笑)
初段編の2年後の話でした。
柳君もちゃんとプロになれたようです。
そしてヒカルは三冠らしいです。
佐為はご存知七段です。
ちなみに京田さんは三段です。
2年前はヒカアキの留守中は頑張って佐為が家事してましたが、今は家政婦を雇ったみたいですね。(最初から雇っとけ)
双子は相変わらず実家かな?
そろそろ行洋おじいちゃんから囲碁を教わり出してるかもね★
京田さんは普通にモテます。京田さん自身も驚くほどに。
でもいい男は早いもの勝ちなのです〜。彩の勝利です!
てことで、京田さんと彩ちゃんもこれで晴れて両想いですvv
京田さんはこれから二年間死に物狂いで頑張ると思われます〜。
ちなみに玄関先で言い合ってたわけですから、もちろんヒカルも佐為も二人の会話を盗み聞きしています(笑)
京田さんと彩のことを知らなかったヒカルは大噴火直前で乗り込もうとしましたが、佐為に止められます。
でもって京田さんがちゃんと順を踏もうとしてることを知って、ちょっと感心したり。(ヒカルはアキラと全く順を踏まなかったからね!笑)
30%くらいは認めてあげたようですよ?
ちなみに京田さんは自分のことを最終予選止まり…と言ってましたが、入段2年で最終予選まで勝ち進んでるって普通にすごいですよね…。
予選を普通に突破する佐為が異常なだけで、三段で最終予選までいってるって普通にすご過ぎですよw
ちなみに少々お疲れ気味の佐為。
もちろん精菜には会いに行ってますよ。
二人は専らおうちデートです。
疲れた時こそ精菜に癒してもらって、充電してるのです〜vv
次の主要キャラ視点リレーは精菜です。
話は更に2年後。
精菜が高1になりました。
そうです!精菜が高校生です!佐為が4年3ヶ月待ったのです!ついにこの時がやってきましたーー!!(笑)
ちなみに京田さんが彩のことを好きだと自覚する日のお話、
おまけ
もあります。
少し遡って高3・7月の京田さんの話です〜。