●DIARY●





▼▼▼第四章 一夜  アキラ▲▲▲



「うわっ!狭っ!」


部屋に入った途端、進藤が声をあげた。

「ダブルって…絶対これ限りなくシングルに近いセミダブルだって!くそっ、騙された」

「仕方ないよ…こんな状況だもの。駅で一晩中いるよりかはマシだと思わないと」

「そうだけどさぁ…」



今日のイベントは生憎台風と重なってしまって、早々に切り上げとなってしまった。

会場を追い出された僕らは何とか駅までは辿りついたものの、案の定交通機関が全てストップしていて、身動きが出来ない状態に。

でも、一緒にいるのが進藤だったからか…何となくこんな状況も嫌ではなかった。

進藤は…嫌そうだけど。


「あー…取りあえずオレ、シャワー浴びてくるな。びしょ濡れで気持ち悪いし」

「ああ」


浴室も狭すぎ!と更に進藤が叫んだ。

僕の方も濡れたスーツを脱いで、部屋に準備されていた浴衣に着替えた。



「ふぅ…やっと落ち着けるな」

とベッドに座る。

それにしても…本当にシングルみたいに小さいな…このベッド。

大の大人が二人…寝れるかな?

恋人同士ならまだしも…ただの同僚でしかない僕らが。

そう思うと少し寂しくなった。

それが僕の彼に対する気持ち。

好きになって…もう何年だろう。

ずっと片想いだ。

僕の想いが通じる日は…果たしてやってくるのだろうか……




「出たぜー。オマエも入れば?」

「ああ。じゃあ…」


彼と入れ違いで僕もシャワーを浴びに入った。

汗を流すとすごく気持ちいい。

でも、段々と緊張してくるのが分かった。

あんな狭いベッドで今夜進藤と二人きり。

僕らだってもういい歳なんだし、何も起こらない保障はない。

でも、起きる保障もない。

起こってほしいような…ほしくないような、複雑な心境だ。




「…進藤?」


バスルームから出ると、彼の姿はなかった。

あれ?と頭を傾げるのと同時に入口のドアが開いた。


「あ、塔矢もう出たんだ?」

「進藤、それ…」

「へへ♪自販機で買ってきたんだ♪」

彼の手にはビールが2本。

「未成年のくせに何を考えてるんだ!」

と、直ぐさま没収。

「何すんだよ!返せ!」

と、またすぐに取り返された。


「これぐらい飲まねーと寝られるか!」

早々と一本プシュっと開けて、早速ぐびぐび飲みはじめた。

「オマエも飲む?」

「いらない」

「フン、真面目な奴」

「もう寝る。お休み」


プイッと顔を背けた僕は、ベッドに入って彼に背を向けて、壁の方を向いて目を閉じた。

すぐにもう一本の缶も開ける音が聞こえて、その後テレビを点ける音、それを見て笑う彼の声も聞こえた。


一時間ぐらい経った後かな、進藤の方もベッドに入ってきた。

と思ったらすぐに寝息も聞こえて、ホッとしたような残念なような…。

少しだけ体を起こした僕は、部屋の電気を消して改めて眠りにつくことにした。

目を閉じると外の音がよく聞こえる。

台風の激しい雨風の音。

何かが転がる音。

窓がガタガタいう音。

煩くて…少し恐くて、進藤がいなくても全然寝れなかったかもしれない。

そう思い出してきた頃、寝返りをうった彼の体が…僕に密着するのが分かった。

いや、密着どころか…後ろから抱きしめられてる??


「し、進藤…っ!」

「……」


返事はなかった。

寝てる…のか?

何とか離そうとしたが、彼の体は全く動かなくて。

こんな時…つい男と女の力の差を感じてしまう。

諦めてそのまま大人しくしてると、何やら彼の手がもぞもぞと動き出した。


「進藤…?」


その手は僕のお腹の辺りを摩って、何かを探してるような感じだった。

ようやく見つけたのか、シュッと浴衣の腰紐を解いてきた。

――って、説明してる場合じゃない!


「ちょっ、何するんだ!キミっ…!」

「へへ〜♪勝った〜」

「勝ったって、意味分からないぞ!」


返せ!と起き上がるとますます浴衣がはだけてしまって、慌てて隠す。


「塔矢って可愛いな〜」

「ふざけ…っ――」


ふざけるな!と言いたかった口はキスで塞がれた。


「―……ん……っ」


しかもこのキス…何だかお酒の味がする。

進藤の奴、酔っ払ってるのか??

酔った勢いで僕のファーストキスを奪われるなんて冗談じゃない!!


「ん…っ、ん……ん…」


でも……相手が進藤だからか…大人しく彼のキスを受け入れてしまった…。


「―…は…ぁ……」


キスしてる間に僕の浴衣はいつの間にか脱がされていて……胸に彼の手が伸びてきた。

もみもみ…乳房を揉まれる。

抵抗しなくちゃいけないのに…出来ない……


「なぁ…塔矢。オレ…エッチしたくなってきた。付き合ってよ…」


耳元で、甘い息を吐きながら囁かれた。


「…エッチ?」

「うん」

「でも…そういうことは好き合ってる男女がするものだ…」

「じゃあ全然問題ないじゃん。オレ塔矢のこと大好きだし」



え…?



「オマエもオレのこと…好きだよな?」

「………」


頷くしか出来なかった。

フッと笑った進藤が、僕の体をベッドに押し付けてきた。

下から彼の顔を見上げて…初めての角度にドキドキ胸が高鳴る。


「―……ん……」


もう一度落とされたキスは…何だかさっきよりも濃厚で。

しかも同時に胸も揉まれていた。


「……ぁ……」


唇から徐々にずれていく彼の口。

頬に…耳に…そして首筋、果ては胸にまで到達して、先端を口に含まれる。

美味しそうにしゃぶられて…弄られて、舌で転がされていく。


「…ぁ…ん…っ」


何だかその感触が気持ちよくなってきて、今まで出したことのない声が僕の口から出た。

進藤が僕の目をじっと見つめてくる。


「気持ちイイ?」

「…うん…少し」

「じゃあもっと気持ちいいことしようぜ」

「…え…?」


彼の手が胸から…もっと下の、下半身へと滑っていった。

太股…内股…そして下着の上から僕の大事な部分をぷにぷに押してくる。

あ……本当だ。

ちょっと気持ちいいかも……

でも下着の隙間から侵入してきた指が直にそこに触れると…快感より恐怖が勝ってきて。

しかも直ぐさま下着を脱がされ、おまけに足を広げられる。


「やっ……」

「塔矢…」


羞恥に恐怖。

戸惑う僕を落ち着けるかのように――再びキスされる……


「好きだ…塔矢…」

「進…藤…」

「好きだよ…」

「…うん、僕…も…」


彼の目。

優しくて…どことなく嬉しそうで…。

僕も嬉しい。

僕もキミのこと…大好き――と…彼の胸に抱き着いた。



「―……ぁ…っ、あ…ん…、は…ぁ…―」


じっくりと秘部を慣らされた後、進藤が大きくて固いものをそこに当ててきた。


「い…た……」

「ごめん…ちょっと我慢な」

「う…ん…」


徐々に深い所まで押し込まれる。

大好きな彼と一つになれてる嬉しさが、痛さに勝っているのが分かった。

しかも、その痛さがどんどん気持ちよくなってきて……


「―あ…ん、あぁ…っ、あ…」

「……は、塔…や…」


初めての感覚が襲ってきた後、僕の中に何かが溢れたのを感じた――



「は…ぁ…進…藤」

「塔矢……」


繋がったまま、僕らは何度も唇を合わせて…余韻に浸った。

このセックスが…僕の人生の転機になるなんて…この時は思いもしないで。


ただ残念だったのは、翌朝目覚めたら…進藤に昨夜の記憶が残ってなかったってことだ。

酔った勢いで、僕は襲われただけだったのだろうか。

何度も囁いてくれた僕への想いも…全て嘘だったのだろうか。

ショックが大き過ぎて、僕も何事もなかったように振る舞うことにした――










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