●DATING SITE 2●
「囲碁囲碁囲碁………あった、これ…かな?」
オレも塔矢も招待された3つ年上の女流棋士の結婚式。
その新郎新婦を巡り合わせたというサイトを、オレも花嫁からこっそり教えてもらった。
もちろん結婚相手を探す為じゃない―――塔矢と結婚する為だ。
登録数が女だけでも万単位になるというその出会い系サイト。
でも新着、東京都、25才〜29才、とまで絞れば、自ずと100人ぐらいには絞れる。
塔矢の性格からして、住んでるところと年齢ぐらいは本当のことを入力してるはずだからだ。
後は片っ端から画面とにらめっこ。
『囲碁』の二文字をひたすら探す。
アイツのことだ、職業の欄には書けなくても、趣味か自己紹介文か、絶対にどこかに布石を落としてるはずなのだ。
「あった、これ…かな?」
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『キラ』
28歳、東京都、高卒、フリーター。
趣味は読書、映画鑑賞、旅行、囲碁。
初めて登録してみました。どちらかと言うとインドア派なので、一緒におうちでゆっくり過ごしてくれる方だと嬉しいです。
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たぶんコレ。
いや絶対、99%。
後はアイツが食いついてくれるメールを送るだけだけど、これが一番難しいらしい。
このサイトを教えてくれた花嫁が言うには、なんせ女側は登録すると多い人は一日に何十人からもメールが届くそうなのだ。
もちろん全員に返信は出来ないから、来た中から何人か(もしかしたら一人)に絞ることになる。
数多くの中から文才のないオレが塔矢に選ばれなければならないのだ。
何て書く?
最初は初めまして、か?
こんにちは、か?
「…………なにやってんだろオレ…………」
我に返ると、急に馬鹿らしくなってスマホをベッドに投げ捨てた。
こんな何の意味のない文章を、無い脳みそフル回転させて必死に考えてるなんて……塔矢にバレたら怒られそうだ。
それより神の一手を極めるために、いい手筋の一つでも考えろ!と言われてしまいそうだ。
出会い系なんてのは、その名の通り、最終的な目的は実際に会うことだ。
つまり携帯番号なりメールアドレスなり、LINEのIDなりをゲットする為のものだ。
ベッドに投げ捨てたスマホを再び手に取る。
もちろんこのスマホには既に塔矢の番号もアドレスもIDも全て入っている。
それどころか最新の着信履歴は塔矢本人だ。
きっと今頃塔矢にはサイトを通じて大勢の男から連絡が来ていることだろう。
彼女が誰かと連絡を取る前に、オレがすることは一つだ――
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