●DATING SITE 3●
「何だこれは……」
サイトに登録して数分後には早速1人から連絡があった。
一時間もすれば軽く30人から。
半日もすれば100人をも超えて、僕は目眩がしそうだった。
もちろん全員に返信するわけにはいかない。
そんな時間はない。
この中からある程度絞らないと…………と思うのだが、100人分のコメントを読むだけでもう大変だった。
ピンポーン
それなのに、玄関のチャイムが鳴って邪魔が入る。
ピンポーンピンポーンピンポーンと連打されて、僕は急かされるように玄関に向かった。
全く、扉を開けるまでもない。
誰が来たのかなんて一目瞭然。
「進藤!頼むから人の家のベルを連打するのは止めてくれ!」
ガラッと怒りながら扉を開けると、予想通り進藤が立っていた。
「塔矢、今ヒマ?一局打たない?」
「暇じゃない……けど、いいよ…」
出会い系のコメントを読むことより、もちろん進藤との一局の方が大事だ。
というか、彼との対局は何物にも代えれないのだ。
(こんな碁バカだから……結婚出来ないのかもしれない……)
「突然押しかけてゴメンな。何かしてた?」
「え?!べ、別に何も……」
「本当に?」
「う、うん……」
「ふーん…」
碁盤を挟んで向かい合う。
進藤が僕の顔をじっと凝視してくる。
「……な、何か付いてる?」
「……ううん。塔矢もさ、例のサイト教えて貰ったんだろ?」
ドキッ
「もう誰かと連絡取った?」
「……いや。し、進藤も教えて貰ってたんだ…?」
「うん」
「じゃあ……進藤も誰かに連絡した?」
ズキッ
尋ねた後で、何だか少し胸が傷んだ気がした。
進藤が出会い系で女の人と連絡し合う――そう考えただけで嫌な気分になった。
何で……
「ううん。連絡しようと思ったけど、やめた」
「……どうして?」
「ここに来る方が早いと思ったから」
―――え?
「別に新しい出会いなんていらない。オレが恋人にしたいのは……ううん、結婚したいのは一人しかいないから」
「………」
「塔矢、本当今更だと思うけど、オレの気持ち……伝えてもいい?」
赤くなった彼の頬。
僕も連れて赤くなる。
「好きだよ……ずっと好きだった。出会い系なんかより、オレとの出会いを大事にしてよ…塔矢」
進藤に左手を取られる。
でもって薬指の付け根にチュッとキスされる。
もちろん僕の顔は、顔どころか身体中がもう真っ赤っかだ。
「進藤……それは僕と付き合いたいってこと?」
「うん。でもって結婚したい」
「……」
「結婚しよう、塔矢。そしたら毎日打てるよ?」
失礼な気がしたが、クスッと笑ってしまった。
僕には最高に効く口説き文句だからだ。
もちろんその台詞がなくても僕は首を縦に振っていただろう。
「それは最高だね…。もう結婚するしかないね」
「だろ?」
碁盤越しに彼が僕を抱き締めて来る。
実に僕ららしいと思った。
僕らの間には常に碁があるからだ。
今までも、もちろんこれからも――
小学6年の頃には既に運命の人に出会っていた僕ら。
今更新しい出会いなんて必要ない。
新しい出会いは――僕らの子供とだけで十分だ。
「今日…泊まってもいい?」
「いいよ…時間を気にせず打てるね」
「…そういう意味じゃないんだけど」
「冗談だよ」
僕らは碁盤を挟んだまま、ひとまず結婚の約束のキスをした――
―END―
以上、出会い系サイト話でした〜。
んー、最初に考えてたのとちょっと違う展開になりましたね。
最初は本当にサイトでヒカアキがしばらくやり取りしてもらって、初デートで待ち合わせ場所にいたのがヒカルでビックリ〜な展開を考えてたんですが(笑)
まぁヒカルには文才が無いと思うので、そもそもアキラが惹かれるだけの文章が書けないってことでこんな話に(^
^;)