●CUPID 8●
「ごめんなさい」
進藤の部屋に着いた後、両親に今日のことを謝る為に電話をかけた。
そして今――進藤といることも。
「どうだった?先生怒ってた?」
「ううん…そんなには」
「そっか…。明日、オレもオマエの家に行くな。先生と明子さんにちゃんと承諾してもらう」
「うん…」
明日のことは少し不安だけど、今夜のことも不安。
進藤の部屋なんて初めて来たし、そもそも碁を打たないで二人きりだなんて落ち着かない。
一体何をすれば…何を話せばいいんだろう。
世間話か?
「最近は……円高だね」
「は?」
「いや、その…円高だから新婚旅行でお得かな〜なんて」
「ああ…そうだな」
新婚旅行という言葉を出してしまった後で、しまった!と思った。
何だか無性に恥ずかしくて顔が熱くなる。
「そっち…行ってもいいか?」
「え?…うん」
テーブル越しに前に座っていた進藤が、僕のすぐ横に移動してきた。
左手をそっと握られる――
「緊張してる?」
「…うん」
「オレも…。でも、すっげぇ嬉しい」
握っていた手が肩に回されて――抱き寄せられた
頬にそっとキスをされる――
「幸せにするな…絶対」
「うん…――」
優しく触れていた彼の唇が僕の口に移動して、初めてのキスにときめいてる間もなく激しく貪られる――
「んっ…、ん、…ん――」
舌と舌がどっちのものかなんて分からないぐらい絡めあって――
この飢えてる感じがお互いの今までのすれ違いを物語ってるような気がした。
「――…あ…はぁ…―」
うっとりと視線を定めない目で余韻を浸ってると、進藤に促されて立たされる。
「ベッド…行こうぜ」
「…うん」
カチャっとドアを開けた後、寂しそうにベッドを見つめる進藤。
「…どうかした?」
「ん…、昨日までホタルもここで寝てたから…なんかな」
「……」
「もう帰っちまったのかと思うとやっぱ寂しいな…なんて」
「…二度と会えないわけじゃないだろう?」
「うん、今からアイツを作るんだもんな…」
進藤がそっと僕のお腹に触れてきた。
「明日の朝には……ここにホタルがいるんだよな」
「うん…たぶんね」
「よし、頑張ろ。今夜は寝かせないからな、塔矢」
「…うん――」
頷くと、いきなりベッドに倒れるよう肩に体重をかけられた。
上に乗られて、初めての態勢に胸がドキドキする。
「塔矢…好きだ」
「僕も…」
「好き……大好き」
彼の愛の囁きは一晩中続いていた―――
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