●CUPID 7●







「本当にここであってるのかよ?」

「うん、100%。あの風見鶏の間で結納があるはず」



塔矢の誕生日もとい結納当日―――オレとホタルもその会場に乗り込んでいた。



「あ!来た!」


塔矢本人と名人と明子さん。

それに婚約者とその両親も一緒だ。


「やべぇ…本当に大丈夫なのかよ?乗り込んだ方が早くねぇ?」

「大丈夫だよ。頑張ってね、パパ」

「お…おう」


ドアが閉まり、あとは塔矢が出てくるのを待つだけ。

本当に塔矢は逃げ出すのだろうか?

時間が経てば経つほど不安になってくる。



「なあホタル、いつになったら………あれ?」







………ホタルがいない………







バタン


ドアが再び開く音がして慌てて振り返ると―――塔矢が出てきた。

廊下の端にいるオレと目が合い、塔矢が駆け寄ってくる。

オレの足も勝手に走りだした――


「進藤……どうして」

「いや…オマエの結納ぶち壊しに…なんて」

「……」

「…で?結納…は?」

「………やっぱりやめる」

「え?」

「やっぱり…好きな人と結婚したいし」

「それって……オレ?」


途端にボッと顔を赤める塔矢。

そんな彼女を遠慮気味にそっと抱きしめた―――


「オレも……好きだよ。ずっと前から…」

「嘘…だって彼女は…?」

「彼女?ああ…ホタルのことか?あの子は彼女なんかじゃないよ。オレらの……」

「僕らの…?」

「恋のキューピッド…かな?」


は?と首を傾げる塔矢の頬に優しくキスをして―――耳元で囁く。


「オレと…一緒になってくれる?」

「…うん――」



後から考えたらなんて簡単なことだったんだろうって思う。

もっと早く言えばよかった。

でも、間に合った。

ホタルの…オレらの子供のおかげだ。




「…塔矢、今からオレん家来てくれねぇ?」

「え?」

「出来たら…泊まりで」

「泊まり…」


その意図に気付いた塔矢は更に顔を真っ赤にしてくる。

コクンと承諾してくれた彼女の手を取って、そのまま駐車場へと急いだ。

そして車での移動中、ホタルのことを話してみる。



「ありえないよ」


って最初は冗談半分に聞いてた塔矢だけど、着く頃には半分信用してくれた。

なんせあの顔だし。



「…でさ、アイツの誕生日、2009年の9月らしいんだ」

「え?それって…」

「そ。逆算するとあんま時間がない」


遅くても今月中に塔矢に妊娠してもらわなくちゃ…。

というか、オレはホタルに誕生日にお前を作ったとか何とか言ってたみたいだから、たぶん今夜頑張ればデキるんだろうな。


「…いい?」

「……うん」





13年後――オレらの子供を過去に呼ぶ為に――













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