●CUPID 6●
「塔矢、コレ」
「え?」
突然渡されたディズニーランドの袋。
「お土産。昨日行ってきたから」
「ふーん…ありがとう」
行ってきたって、あの彼女とか?
いらない……と思ったけど、真面目な僕は一応お礼を言う。
「あ…きれいなストラップ」
「キャラクターものはオマエ好きそうじゃないからさ、ぱっと見ディズニーだと分からないやつにした」
「別に好きだよ?プーさんとか可愛いと思う」
プッと吹き出されて、そのままイベントの受付に言ってしまった。
少々ムカつくが、初めてもらったお土産は異様に嬉しい。
携帯に早速つけてみよう。
今日のイベントは小中学生を対象にした囲碁体験イベント。
なので手伝いの棋士も若手が多い。
あ、若手じゃない人を一人発見。
「なに笑ってるんだ?アキラ君」
「別に笑ってませんよ、緒方さん」
僕の視線に気づいた緒方さんがこっちにやってきた。
「今日はご機嫌だな。明日の結納がそんなに楽しみか?」
「………」
…そうだった。
僕…明日正式に婚約するんだ。
「はは、そんなに固い顔するな。いい奴なんだろ?アキラ君を幸せにしてくれると思うぞ。進藤なんかよりな」
「……!」
緒方さん……気付いてたんだ。
恥ずかしさに頬が赤くなる――
「まぁ…嫌なら行かなければいいだけの話だがな」
「無理ですよ…父も母も一緒ですし」
「なら逃げればいい」
「逃げてどうするんですか。後々気まずくなるだけです」
「代わりに進藤と結婚すればいいだろ。先生達は反対しないと思うがな」
「はは、彼女持ちの彼と?」
「ああ…そうだったな。アキラ君にそっくりな彼女が出来たらしいな」
「……」
「アキラ君も進藤も不器用すぎて笑えるよ」
緒方さんが僕の手にしている携帯をちらっと見た。
「そのストラップ…進藤からもらったんだろ?」
「見てたんですか?」
「つまり彼女とのデート中にアイツはアキラ君のことを考えてたわけだ」
「……え?」
「いい加減アキラ君も気付いてやれ。手遅れになる前にな」
気付くって……何を?
手遅れって……まだ間に合うってこと?
…そうだね。
口にはしてくれないけど薄々気付いてた。
むしろ、僕似の彼女が出来た時点で確信が持てた。
僕のとる行動を両親は許してくれるだろうか。
進藤は……受け止めてくれるだろうか。
ううん、きっと受け止めてくれるはず―――
NEXT