●CUPID 5●
「あービックリしたー!塔矢がいるんだもん」
「若いママが見れちゃった♪」
ホテルから帰る途中の車の中で、オレとホタルは妙にテンションが上がっていた。
「パパはママと二人きりでご飯食べに行ったことある?」
「あるよ。碁会所帰りのラーメンとかしょっちゅうだし、あとマックとか」
「ええー…それって完璧パパの趣味じゃん。全然オシャレじゃなーい」
「何でオシャレでなきゃなんねーんだよ。デートでもないのに」
「パパって女心分かってないね…」
相変わらず、と溜め息をつかれてしまった。
何だよ。
オレだって他の彼女とデートする時はそれなりの所に行ったぞ。
…て、娘には言えないけど。
「ラーメンとマックばっかなんてママ可哀そう…。あんまり好きじゃないのに…」
「あーもう、分かったよ!今度アイツと飯食いに行く時はもうちょっと考えるって」
「うん♪そうしてね」
ころっと途端にニッコリ笑顔を向けてきた。
「あ。パパ、明日も仕事だよね?」
「午前中だけな」
「終わったらすぐ帰ってきて。行きたい所があるの」
「どこ?」
「へへ〜ディズニーランド♪」
……はあ??
あちこち行きたい行きたい言ってくる12歳の体力の限界のなさに目眩しながらも、いつまでいてくれるのか分からない未来の娘を出来るだけ楽しませてあげたいから…しぶしぶ今日も付き合ってみる。
でも12月中旬、クリスマス前のこの時期のディズニーランドはものすごく人が多い。
おまけに25周年だし。
「13年後もディズニーランドぐらいあるだろ?」
「あるよ。でも無くなったアトラクションとかあるし、絶対来たかったの」
「ふーん」
クリスマスモード全開のパーク内。
平日なのに家族連れとカップルで混みまくっている。
逸れないように手を繋ぐのはいいけど、これじゃあどっからどうみてもオレらもカップルだよな…。
「遊園地の乗り物って2人乗りか4人が多いでしょ?だからいつもケンカになるの」
「へぇ…?」
「パパの隣はいっつもいっつも妹。だから今日は独占出来て嬉しいな」
妹??
「そういえばホタル、オレと塔矢って……何人子供いるんだ?」
「今んとこ3人。私と妹と弟ね」
「うお…マジ?」
一人っ子だったオレは兄弟ってものに憧れてたから無性に嬉しい。
3人もいるのか〜ラブラブだなオレら。
「だからお土産買って帰りたいなー。パパもママに買ったら?」
「お土産ねぇ…クッキーとか?」
「形として残るものの方がいいよ」
「だよな」
てことでストラップを買ってみた。
明日イベントの仕事で一緒になるから渡してみよう。
アイツに土産なんてあげたことないけど……喜んでくれるかな?
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