●CUPID 3●
「ただいまー」
「お帰りなさいパパ」
仕事から家に帰ると、塔矢にそっくりな女の子がピョンと出迎えてくれた―――
あの「パパ」と初めて言われた夜から早2日。
だいぶそう呼ばれるのにも慣れてきた。
彼女の名前は進藤ホタル。
なんと13年後からやってきたオレと塔矢の子供…らしい。
普通に考えるとありえない話だが、オレは過去に同じような経験をしたことがある。
――佐為――
あいつが過去からの使者なら、未来からの使者がいても不思議ではない。
というか、13年後ではオレと塔矢が普通に夫婦で家庭を築いてるってことが信じられないぐらい嬉しい。
「ふふ。パパったらそんな悠長に喜んでたらダメだよ」
「へ?」
「言ったでしょ?私、今、12歳なの。私の誕生日、2009年の9月なんだよ」
「2009って…」
来年…?
て、ちょーっと待て!
もう2008年の12月だぞ??
それって……
「計算出来た?さっさとママをものにしてよね。でないと私消えちゃうかも」
「て言われてもなぁ…」
それが出来たら苦労しないっていうか…
もう何年越しの恋だと思ってんだよ…
「…あのさ、未来のオレからなんかヒント聞いてないの?」
「んーとね、確かパパ…ママの誕生日にママをゲットして〜そのまま私を作ったとか言ってた」
「………」
小学生の娘になんてこと話してんだオレ…
「あ、平気だよ。赤ちゃんの作りかた、この前学校で習ったから知ってるもん」
「そ…そっか」
と…とりあえず、塔矢の誕生日に告ればいいんだな。
あれ?
でも確かその日って結納がどうとか言ってなかったか…?
「塔矢の結納…ぶち壊せばいいのかな?」
「ううん。ママが途中で逃げるらしいよ」
「は?」
「だから〜もともとママもパパのこと好きだったんだよ。でも成り行きでお見合いしちゃって婚約ってなりかけたんだけどーやっぱり嫌だったみたいで逃走するんだって」
「…マジ?」
塔矢…オレのこと好きなんだ。
すっげー嬉しい…
「だからパパは待ち構えてればいいの。逃げたママをそのままゲットしてくれればオールOKよ」
「お。意外と簡単だな」
「ふふ、『一応』ね。ねーパパ、まだ誕生日まで時間あるし、ホタルとデートして♪若いパパとだったら、きっとパパと私、恋人同士に見えるね」
「はは…」
そう言って直ぐさま未来から持ってきたメイク道具を開けるホタル。
もともと身長も160センチあるらしい。
ヅラもかぶって大人のメイクをして服装もそれなりにすれば10代後半に見えないこともない。
「パパ、今からインターコンチネンタルにディナー食べに行こ」
「はい?」
「いいから行こ」
「あ…ああ」
昨日のイベントといい、ホタルに押されるがままに行動するオレ。
ただ待ち構えてればいいと見せかけて、実は誘導させられてる?
まあ…任せればいいか。
塔矢を手に入れられるのなら―――
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