●CUPID 2●







―――僕と進藤はどういう関係なんだろう―――




ただのライバル?

友達?

もしかしたら両想いかも…と思ったことも何度かある。

でも他の女の子と付き合う彼を見て、やっぱり思い違いか…と思ったことも何度かある。



後援会に勧められて何となくしてみたお見合い。

すごくいい人で、気がついたら結婚まで話が進んでしまっている。

でもまだ迷いがある。

僕の結婚に反対もしなければ祝ってもくれない進藤のことが気にかかる。



もし彼が友達として喜んでくれてるのなら諦めがつくのに―――


僕のことを少しでも好きで反対してくれるのなら結婚しないのに―――















「お前、昨日進藤見た?」

「見た見た。マジありえないよなー」

「何の話?」

「昨日の棋院主催のイベントにさ、進藤が彼女連れて遊びに来たんだよ」

「へー」

「その彼女の容姿が有り得なくてさー」

「なに?めちゃブスだったとか?」

「いや、もうそんなレベルじゃなくてとにかくありえない」

「アイツ塔矢の結婚聞いて血迷ったんじゃねー?あ、やべ…本人来た」


僕が対局場に入ると、進藤の噂をしている棋士がいた。


昨日のイベントに彼が彼女を連れて来た…だって?

ふーん…また彼女出来たんだ。

そうなんだ…。

胸が痛むと同時にモヤモヤする。



僕の結婚で進藤が血迷った…?



それは一体どういう意味なんだろうか。

一体どんな彼女を連れてたんだ…?






「アキラ〜おはよー」

「芦原さん。おはよう」


僕の横に来るなり、何やらジロジロ顔を覗き込んでくる。


「アキラ…昨日イベントに来た?進藤君と」

「は?まさか…。昨日は母とお茶の教室に行ってましたから」

「だよなー?おっかしいなー」


だから、何が?


「進藤が…彼女を連れてたって話ですか?」

「あ。聞いちゃった?そうなんだよねー。アキラにそっくりな彼女とね」

「………は?」



今……なんて……



「アキラには妹も従姉妹もいないからもしかしてアキラ本人かな〜とか思ったんだけどやっぱり他人の空似ってことかー。いやーどこであんなそっくりさんゲットしたんだろうね進藤君」


あはは〜と笑って自分の席にさっさと向かってしまった。



なに…?

つまり僕にそっくりな彼女が彼に出来たってことか…?

意味が分からない。

一体何がしたいんだ?進藤は…




「進藤っ!」


対局場に入って来た彼に即座に詰め寄った。

全員の視線が僕らに向けられる――



「な、なんだよ塔矢」

「…昨日僕によく似た子とイベントに行ったんだって?」

「べ…別に似てねーよ。オマエより断然性格いいし、純粋で可愛いしな」

「………」

「そこはオレ似なのかも…って、やべ、いや、なんでもない」

「…その子、打てるの?」

「おう!すげー見たこともない手打ってきてさ、オレもう感激で昨日から興奮して寝れねーの」

「……そう。よかったね」


開始の時間になったので、彼に背を向けて自分の席へと向かった。

大事な対局なのに集中出来ない自分が情けない。

惚気話なんか聞かなきゃよかった。

進藤のバカ…。


勝手にすれば――














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