●COLLEAGUES U 2●
悶々とした気持ちのまま放課後になってしまった。
一度家に帰り、私はこの前買ったチョコを手にした。
(制服のまま行こうかな…)
着替えたらまた両親に何を言われるか……
そうっと家を出て、私は悠一君の家に急いだ。
ピンポーン
すぐにドアが開いた。
「奈央ちゃん、いらっしゃい」
「ごめんね…時間ないのに」
「ええよ」
一緒に彼の部屋に向かった。
悠一君は帰って来てからしばらく経ってるのか、既に着替えていた。
部屋に入ると大阪に行く準備をしていたのか、小さめのスーツケースが広げられている。
時間もないから、早速私はチョコを渡した。
「ありがとう。めちゃめちゃ嬉しいわ〜」
「あの、ごめんね…手作りじゃなくて」
「そんなん気にせんでええよ。奈央ちゃんからのチョコやったら何でも嬉しいし♪」
「うん……」
早速包装を解いて「めっちゃ旨そう」と一粒頬張っている。
ふと、机の上を見ると――紙袋が置かれていることに気付いた。
近付いて、こそっと中を覗く。
(……チョコだ……)
紙袋の中には10個近くあるだろうどこからどうみてもバレンタインのチョコレートが入っていた。
しかも義理には見えない大きさ。
ちょっと…ううん、かなりショックを受けた自分がいた。
どんな感じで受け取ったんだろう。
どんな子があげたんだろう。
告白もされたんだろうか。
私より可愛い子だったらどうしよう。
私と付き合ったことを悠一君が後悔してたらどうしよう。
嫉妬で胸が苦しくなる。
涙が出そうになる。
「……忙しいのにごめんね。私もう帰るから。明日の対局頑張ってね…」
「え?な、奈央ちゃん待って…っ」
部屋を出ようとすると――腕を掴まれた。
「まだ時間あるし、もうちょっとおったら?」
「でも…準備があるでしょう?」
「準備やもうほとんど出来とうし」
「でも…」
「奈央ちゃん、せっかくのバレンタインなんやし、もうちょっと一緒におろう?」
「……分かった」
真剣な彼の表情に負けて、私は促されるようにベッドに座った。
ぎゅっと抱き締めてくる。
頭にチュッとキスされる。
そして彼の顔が近付いてきて、私達は唇を合わせた――
「――……ん……」
最初は優しく、徐々に深く、交わるようなキスをしてくる。
こんなキスを続けていくと、私の体はどんどん熱くなっていく。
気持ちいい……
このまま押し倒してくれないかな……なんて、そんなことを考えてるエッチな自分が嫌になる。
両親が知ったら卒倒するんじゃないだろうか。
こんな娘に育てた覚えはないって…きっと非難される。
「……は……ぁ」
悠一君がもう一度、ぎゅっと抱き締めてくる。
「あー……どうしよ。時間ないのに…」
「……そうだね」
チラリと彼がベッドサイドに置かれている時計を見た。
既に17時45分だ。
あと15分で出発しなければならない。
「無理やな……」
と諦めて私の体を離した。
「奈央ちゃん…土曜は会える?」
「土曜…?」
「うん…」
「……」
朝の両親の言葉がこだまする。
――だって奈央ちゃん最近土日も出かけること増えたし――
またこの土曜も出かけたら何を言われるか分かったものじゃない。
「ちょっと…無理かな」
「ほな日曜は?」
「日曜もちょっと…」
「……奈央ちゃん、何かあったん?今日ちょっとテンション低いやん…?」
「……親にバレそうなんだよね」
「え?」
「前は土日もずっと碁盤の前に座ってたのに、最近出かけてばかりだから…今朝突っ込まれちゃって」
「…バレたらあかんの?」
「ダメだよ!悠一君だって親にバレたくないでしょ?」
「んー…」
悠一君が頭を掻いている。
「いや、別にバレてもいいけど…。兄貴やって普通に彼女連れてくるし…」
「でもいつもご両親の留守の時に私を呼ぶじゃない。それってバレたくないからでしょう?」
「いや、留守を狙ってるのは下心があるからで…。だからバレるとかバレんとかは別の話っていうか…」
「え…?」
「でも奈央ちゃんちは門限あるって言よったし、厳しい親御さんなん?」
「……厳しくはないけど、考えが古いから」
「古い?」
「結婚までは……貞操を守るのが普通だと思ってる」
「あー…それはちょっとマズイな」
悠一君がゴメンと謝ってくる。
でも悠一君だけが悪いわけじゃない。
私だって同罪だ。
「だから……しばらく土日は家にいたい」
「…デートせんってこと?」
「また春休みに入ったら親がいない平日に出来るから、それまで我慢しない?」
「……」
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