●COLLEAGUES 4●
「奈央おっはよ〜!」
「遙ちゃん、おはよう…」
「で?で?どうだった?西条君との初デートは」
翌朝――自分の席に座るなり遙ちゃんが直ぐ様やってきて、昨日のことを聞いてきた。
途端に顔を赤くして下を向いた私を見て、
「え?もしかしてチューしちゃった?キャーvv」
と一人盛り上がっている。
チュー……うん、確かにした。
何回も。
もう数え切れないくらい。
そして……
「……しちゃった」
「え?」
「西条君と……最後まで」
「へっ?!」
ええ――!!?とクラス中に聞こえるくらい大きな叫び声をあげられて、私は慌てて遙ちゃんをクラスから連れ出した。
誰もいない屋上に移動する。
「奈央、本当に?本当にしちゃったの?初デートで?」
コクンと頷いた。
「ひゃー…あんた見た目そんな大和撫子なのに」
「だって…」
「どこでしたの?」
「西条君の部屋…」
「部屋に連れ込まれたの?!」
「連れ込まれたわけじゃないけど……一局打つことになって」
「立派に連れ込まれてるじゃん。対局をエサにホイホイ付いて行っちゃったんでしょ?」
「そ、そういう言い方しないで。私達棋士にとって対局って何より大事なものなんだから…」
「ごめんごめん。で?一局打った後押し倒されたわけ?」
「ちょっと違うけど……。嫌ならやめるって、言ってくれたし…」
「嫌じゃなかったんだ?」
「……」
そう……嫌じゃなかった。
怖かったけど、嫌じゃなかったから……私は西条君にストップをかけなかった。
『ホンマにいいんですか…?』
と再確認してきた彼に、コクンと頷いた。
後はもう……されるがままだ。
もう一度キスした後、ベッドに移動させられて。
服を脱いで脱がされて、お互い生まれたままの姿になって。
上から下まで隅々まで触られて、弄られて。
そして――
思い出すと、かあぁ…と一気に顔も体も赤く熱くなった。
もちろん痛かった。
ちょっと血も出た。
でもそれより……嬉しかった。
大好きな西条君と一番深い場所で繋がって。
一つになれて。
『金森さん……』
と切なそうに苦しそうに私の名前を呼んでくれた彼の表情を思い出すと、もうもうもう…胸が張り裂けそうだ。
私は汗ばんだ彼の背中に手を回して、
『好き…西条君…』
と抱き付いた――
「そっかぁ〜奈央もついに女になっちゃったんだねぇ」
「うん…」
「で?そのまま泊まったの?」
「そ、そんな訳ないでしょ?!ちゃんと夕飯までには家に帰りました!」
「あ、そうなんだ?」
「……」
コトが終わった後、時計を見ると17時を過ぎていた。
もちろん外はほぼ真っ暗。
私は西条君が後始末をしてる間に、急いで再び服を着た。
(というか、例のものをちゃんと用意してたということは、やっぱり最初からするつもりだったのかな……)
『金森さん着替えんの早っ』
と笑われた。
『あの、私もう帰るね……門限あるし』
『そうなんやね。駅まで送るわ』
『うん……』
駅までの道を、私達は無言で歩いた。
何だか気恥ずかしくて、お互いに意識していて、目を合わすことが出来なかった。
あっという間に駅に着いて、
『今日はありがとう…』
と私はお礼を述べた。
『こちらこそ』
『じゃ…また』
『うん…』
改札に向かおうと離れた瞬間に、手を掴まれた。
ビックリして振り返ると――
チュッ…
と一瞬だけ触れるキスをされた。
私の顔は途端に真っ赤になる。
そして彼の顔も――
『ほな、またね』
その時の彼の笑顔は私の心を鷲掴みにした。
はぁ……やっぱり私って西条君のこと本気で好きなんだなぁ……
「次はいつ会うの?」
「来週末かな」
「楽しみだね〜」
「うん――」
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