●COLLEAGUES 5●
私達の交際は上手くいってると思う。
ちゃんとしたデートは月に2回くらいだけど、手合いの日に棋院で会うことも多々あるし。
家が二駅しか離れていないから、放課後に会ったり、夜にこっそり家を抜け出して会いに行ったこともある。
一ヶ月もしたら「金森さん」から「奈央ちゃん」と呼ばれるようになり。
更に一ヶ月経った頃には「奈央」と彼は呼び捨てで私を呼ぶようになった。
もちろん私も「悠一君」と下の名前で呼ぶようになった。
ちゃんとしたデートの時はもちろん恋人らしいことをたくさんしている。
キスも…エッチも。
私の口は相変わらず最中に「好き…」と囁いてしまう。
だってだってだって、悠一君のことが大好きなんだもん。
この想いを分かってほしいから、私は毎回何回も繰り返す。
でも……悠一君が同じような台詞を口にすることはない。
私達は相思相愛で付き合い始めたわけじゃない。
「好きです」と告白し交際を求めた私に、「俺なんかで良ければ」という返事だった。
つまり、彼は私のことを別に何とも思ってないということだ。
男の人は別に好きじゃなくても抱ける――と昔何かで聞いたことがある。
ドラマだったかマンガだったか。
悠一君は私のことを好きじゃなくても抱けるんだ。
好きじゃなくても……はぁ。
落ち込む……
私は中学を卒業して、悠一君より一足先に春休みに入った。
もうすぐ高校生。
中高一貫校だからクラスメートの面子もおそらくたいして変わらないけど、大きく変わることが一つある。
それは制服。
セーラー服からブレザーになるんだ。
チェックの赤のリボンがすごく可愛いくて、同じ柄のスカートももちろんすごく可愛い。
制服が家に届いたその日、私は早速着替えて悠一君に見せに行くことにした。
『今から家に行ってもいい?』のLINEは直ぐに既読になり、『ええよ』とすぐに返事が来る。
そして到着するなり、「じゃーん♪」と制服姿を披露した。
「お。めっちゃ可愛いやん」
「でしょう?早く見せたくて来ちゃった」
「ほな女子高生な奈央と一局手合わせしようかな」
「いいよ〜」
悠一君の部屋に行き、碁盤を挟んで座った。
そして対局をスタートさせる。
もちろん気軽な対局だから、打ちながらお喋りもする。
「悠一君ももうすぐ2年だね」
「そやね」
「進藤君とクラス離れたら不便だね」
「ホンマやな。A組とH組やなってもたら終わりやな…」
「ふふ」
「……」
悠一君の指が止まる。
カチャリと碁石を碁笥に戻している。
「……なぁ、奈央。先にせぇへん?」
「……え?」
悠一君がチラリとベッドの方に視線を向ける。
私の顔はもちろん真っ赤になる。
「い、いいけど……。珍しいね、悠一君がそんなこと言うなんて…」
「ほなって奈央の制服姿可愛すぎるし…。その格好でいきなり来てこの状況で可愛く笑われたら理性も飛ぶわ…」
「そ、そうなんだ…?」
ベッドに移動すると、悠一君が直ぐ様私のことをぎゅっと抱き締めてきた。
髪にチュッとキスされる……
続いて耳に、頬に、そして口に――
「――……ん……」
すぐに口内を貪られ、大人のキスをされる。
「んん……ん……――」
悠一君はキスが上手いと思う。
もちろん他の人と比べたことはないけれど、最初と比べてもどんどん上手になってるのは確かだ。
もう思考がおかしくなりそうなくらい、甘くて、深くて、官能的で……私はうっとりとなる。
「――…は……悠一君……好き」
唇が離れた瞬間に、今日も勝手に出る私の愛の台詞。
「大好き……」
とぎゅっと彼の胸に顔を埋めた――
「ん……俺も」
――え?
「俺も好き…」
え?!
私はガバッと顔を上げた。
「悠一君て私のこと好きなの?」
「え?」
「好きなの?」
「…好きやけど」
「いつから?」
「いつからって……難しい質問やな。いつの間にか?自覚してからももう一ヶ月は経つかな…」
「そう…だったんだ」
私達……いつの間にか両想いになってたんだ……
……すごく嬉しい……
「あー…ごめんな?俺、奈央みたいに好き好きあんまり口に出来んで。何か恥ずかしくて…」
「ううん。もう大丈夫…」
私はもう一度彼の胸に抱き付いた。
嬉しさで滲む涙を見られたくなくて。
そしてもう一度、
「大好き…」
と想いを伝えた。
ちなみにその日のエッチはめちゃくちゃ感じてしまった。
いつもと同じことをしてるのに、彼からも好かれてると思っただけで何倍も気持ちよく思えたから不思議だ。
「おはようございます、金森さん」
4月中旬――私はあの進藤君との対局の機会に恵まれた。
生で初めて見る王子はものすごくカッコよくて、心臓があり得ないほどドキドキバクバクした。
その緊張からか、悠一君のことを聞かれて思わずペラペラ喋ってしまった。
もちろん噂通りの棋力。
全然叶わなくて、念願通りボロ負けした。
直ぐ様その一局を悠一君に見せに行く。
「ホンマ容赦ないなアイツ…」
「ふふ、気持ちいいくらいスパンとやられちゃった…」
「…奈央、進藤見てどう思った?」
「え?」
「アイツめっちゃカッコいいやろ?」
「うん…ちょっとドキドキしちゃった」
(いや、ちょっとじゃないかも?)
「え?」
悠一君が顔がたちまち不機嫌なる。
もしかして嫉妬してくれてるのかな?
だとしたらものすごく嬉しい――
「でも、私は悠一君の方がいいかな」
「え?」
「大好き!」
と、私の方からぎゅっと抱き付いて、そのまま押し倒した。
「進藤君は皆の王子だけど、私の王子は悠一君だけだよ」
「奈央…」
大好きだよ。
これからもずっと一緒にいようね――
―END―
以上、西条×金森女流のお話でした〜。
ナンダコレハ!
しかも無駄に長いぜ!
こんな誰も興味ない話を本当にアップしてしまっていいのか悩みましたが……まぁ一人でも楽しんでいただける人がいるのなら、と。
ちなみに西条にとっても金森さんは初カノですよ。
彼は小6で入段してますので、今までずっと囲碁漬けです。
女の子によそ見する暇なんてナイナイ。
でも興味はありまくりですよ。
可愛い彩ちゃんに一目惚れとかもしてましたもんね。
彩はヒカル似なので可愛い系です。
金森さんはどちらかというと美人系の設定なので、アキラ側?
顔は最初はタイプじゃなかったのかもしれませんね。
でも性格はものすごく純真で純情で一途で可愛いので、西条もすぐに彼女に本気になったと思われます。
交際を始める時って必ずしも両想いじゃありませんよね。
とりあえず告られたから付き合うとか、よくある話だと思います。
西条もそんな感じですね。
とりあえず付き合ってみた……ら、ものすごく性格も可愛くてすぐに好きになって。
でもそれを口に出さないと、相手は分かってくれません。
私だけが好きなのかも…と金森さんはモヤモヤ。
そりゃ好きな人としてるわけだからキスもエッチも嬉しいけど。
でもなぁ……とぐるぐる奈央です。
なので、西条が自分のことを好きになってくれてたと分かった時はめちゃくちゃ嬉しかったと思われます。
これからはもっとラブラブになるかと?
ちなみに彼女出来たんやから準備しとかなな〜とドラッグストアに例のものを買いに行く西条君。
もちろん佐為を引き連れて。
でも佐為は買いませんよ。
買ってしまったら終わりだと思ってる佐為です。
無いからこそ我慢出来てるとこもあるのです。
そんなとんでもない裏話です。
何だか大変なものをアップしてしまった感がありますが(最近そんなんばっかりやな…)、西条も金森女流もこれからも本編で度々出てきますのでよろしくです〜。