●CHANGE 7●
****第七章 子作り アキラ****
「―…あっ、ぁ…んっ、は…」
「塔…や…、…っ…は」
彼の動きに合わせてギシギシと軋むベッド。
僕らは今日も朝から体を合わせていた――
「も…いく……だめ…」
「…は、…オレ…も…」
「――…ぁ…っ」
びくんと体が痙攣して弓なりに反った後――進藤の方も達したのか、体を僕に預けてきた。
彼の体を抱きしめながら…呼吸を整えていく。
「はー…今日も気持ちよかった」
「ん…」
「オマエは?よかった?」
「うん…」
「そっか」
満足げに進藤が体を起こし、シャワーを浴びにバスルームへ向かった。
僕の方も体を起こし、そっと…確かめるように下半身に触れる。
さっきまで繋がっていた場所から、溢れるように精液が流れ出ているのが分かった。
女になって今日で60日。
ちょうど二ヶ月だ。
ちっとも戻らない体にイライラしつつも、実はホッとしている。
まだ子供が出来ていないから。
子供が生まれるまではこの体でいたい。
一生進藤を一人占めする為に――
「あ〜気持ちよかった。塔矢もシャワー浴びてこいよ。すっきりするぜ?」
「あ…うん。ありがとう」
ベッドから下りると当然素っ裸で、進藤が悪戯に僕を後ろから抱きしめてきた。
「ん〜オマエの肌すべすべ〜♪」
続いてお腹の辺りを摩られる。
「まだ居ない?」
「…たぶん」
「生理は?遅れてたりしない?」
「遅れるどころか…最初の初潮以来来てないんだ。やっぱり僕には無理なのかな…」
「んなことないと思うけど…」
一体何が普通で何が駄目なのか、未知の世界な女性の体。
母に聞こうにも恥ずかしくて聞けない。
病院に行こうにも保険証の性別が普通に『男』と書かれてあるので少々気がひける。
今はただ信じてセックスを続けるしか方法はないのか……
「あ。そういえばさ、薬局で調べれるやつ売ってるじゃん」
「妊娠検査薬…?」
「そうそうそれそれ。それ使えば一発で出来たか出来てないか分かるんじゃねぇ?オレ、買ってくるよ。近くに薬局あるし」
素早くいつものジャージに着替え、買いに行ってしまった。
とりあえず僕はシャワーを浴びにバスルームに入ることにした。
「ひー!これゴム買うよりナプキン買うより恥ずかしかったー」
10分後――進藤が真っ赤な顔で帰ってきた。
「あの店員ムカつく。オレが買ったらそんなに変なのかよ?そりゃまだ17のガキだけどさー」
ぶちぶち言いながら、箱を開けて説明書を読み始める。
「えっと……この先に尿をかけて、すぐ蓋しろって。で、縦線が出てきたら陽性」
「分かった」
トイレに入り、恐る恐る書いてあった通りにしてみた。
しばらく待って見ると―――ハッキリと妊娠を示す線が浮かび上がってきた。
「し、進藤…」
「どうだった??」
進藤にもそれを見せると、直ぐさま抱きしめられた。
「やったな!」
「う…うん」
「すげーな!オレら新しい命作ったんだぜ!信じらんねー」
じわっと涙まで溜めて喜んでくれた。
僕も嬉しい。
すごく嬉しい。
後はただ、この子が生まれるまで男に戻らないことを祈るばかりだ――
「病院行こう、塔矢」
「う…ん、でも保険証が…」
「保険証?」
「男の保険証が産婦人科で使われるのはおかしいと思う…」
「あー…そっか。でも、それじゃあどうすれば…」
「母に相談してみるよ」
「そうだな」
直ぐさま帰り仕度をして、進藤と僕の家に帰った。
なんて言われるだろう。
進藤と付き合い始めたことは言ってあるけど、元は男同士なのに…まだ17なのに…と驚かれるだろうか。
母の中では僕はもう女になってるみたいだけど……
「…ただいま」
「お帰りなさいアキラさん。あら、進藤さんも。こんにちは」
「こんにちは…」
タクシーが止まる音で気付いたのか、母は玄関まで迎えに来てくれていた。
玄関で立ちつくす僕らを見て、母は頭を傾けた。
「あの、お母さん。お話が…」
「あら、何かしら。赤ちゃんでも出来た?」
先に言われてしまい面食らっていると、母が高々に笑い出した。
「ほほほ、やっぱりね」
「すみません!明子さん!」
「あら進藤さん。どうして謝るの?二人が望んだ結果なんでしょう?」
「そうですけど…すみません。大事な息子さんにオレ…」
「あら、今は娘よ。それよりもう病院は行ったの?予定日は?」
「いえ、それが…」
保険証の件を話すと、母の知り合いがやっていて、口が固い産婦人科に連れて行ってくれた。
結果は6週目。
予定日は来年の夏。
ずいぶん前に妊娠していたんだな…と驚きでいっぱいだった。
「アキラさん、お父さんには私から言っておきますね」
「うわ、オレも親になんて説明しよう…」
考えるだけで前途多難な僕の妊娠。
でも、進藤と一緒に一つ一つ乗り越えていこう―――
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