●CHANGE 11●





****第十一章 再び  ヒカル****



娘が生まれて二年。

表だっては知られてないけど、同性愛者の中ではあの塔矢が飲まされた薬は結構メジャーになっていた。

そろそろ二人目が欲しくなったオレは、早速手に入れたその薬をじゃーんと塔矢に見せた。



「はい、塔矢。あ、水もいるか?ほら、ゴクッと飲んで♪」

「…嫌に決まってるだろう。次はキミの番だ」

「え?無理無理。オレはタイトル戦がかかってるもん。身重な体じゃ打てねーもん」

「僕だってリーグ戦がある」

「えー、オマエ二人目欲しくねーの?弟か妹も作ってやろうぜ〜」

「嫌だよ、僕ばっかり。次は絶対キミの番だ!」

「ちぇっ」



それでも諦めずに翌日も翌々日もその次の日も頼みこんだが、ひたすらNO!NO!NO!

こうなったら最終手段だ。

こそっと塔矢の食事に混ぜてみた。


「……ん」

「どうした?塔矢」

「キミ…まさか…」

「へへ♪」

「ふざけっ……ぁ……」


人間の性別が変化していくところを始めてみた。

あまりに苦しそうで、オレもちょっと焦る。


「塔矢?!」


意識を失ってしまった塔矢を、慌てて寝室に運んだ。

不謹慎にも…軽い…と思ってしまった。

既に女に変化し終わった体はものすごく柔らかい。

胸も二年前より大きい気がする。








「ん……進藤…?」


一時間ほど眠った後、塔矢が目を覚ました。

自分の体の変化を確かめて、オレを思いっきり睨んでくる。


「信じられないよ…あれほど嫌だって言ったのに…」

「ごめん…。オレどうしても欲しくて…。それに……」

「それに?」


言うか言わまいか迷ったけど、言うことにした。

本当の気持ちだし…。


「女のオマエに…もう一度会いたかった」

「…ただ女性を抱きたかっただけじゃないのか?キミは元はノーマルだものね」

「違う!他の女なんか興味ねーもん!オマエだから…」



三年前――初めて女の塔矢を見た時の想いが……目の前の塔矢を見て再び蘇ってきたのが分かった。

眩しいぐらいに魅力的。

今すぐにでも抱きたいぐらい綺麗。


我慢出来ずに――キスをした――


「―…んっ、ん……ん…」


…そうだよ。

さすが塔矢…。

オレのことよく分かってる。

オレ、オマエが好きなだけで本当は今もノーマルだもん。

ゴツイ男より綺麗なお姉さんが好きだ。

この二年間、男のオマエを抱きながらも、色んな女優のAV見て抜いてきた。

女としたかったのも事実だ。

でもな、他の女と女のオマエは全然違うんだ。

比べものにならない。


「……ん…っ、…ぁ…はぁ…」

「塔矢…塔矢ぁ…」


縋り付くように――ぎゅっと抱きしめた。


「キミは…女の僕に惚れてるんだな…」

「男のオマエも好きだぜ…?」

「うん、分かってる。でもね…キミは正直だから表情が全然違うんだ」

「え……」


気付かなかった……


「ごめん…っ、オレ…」

「謝ることはないよ。嬉しいんだ…キミに心から愛されて」

「塔矢…」

「はぁ…せっかくだから、しばらく女でいようかな。どうせまた産むまで戻れないのだろうし…。久しぶりにキミに思いっきり愛されたい」

「うん…オレ寝かせない自信ある」


クスっと笑ってきた塔矢の唇に再びキスをして――そのまま一晩中愛し合った。

確かに、男と女じゃ求めた量が明らかに違ってたかも…と改めて反省した。

本当だ。

オレは女の塔矢に恋してるんだ。

何百回何千回好きって言っても全然足らなくて。

沸き上がってくる想いが止まらなくて。


「塔矢…愛してる」

「ふ…キミって僕が女になった途端口説くよね。中身は同じなのに、聞いてるこっちが恥ずかしくなるぐらい」

「不思議だよな〜。口が止まらないんだよ」




好きだ――塔矢








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