●CHANGE 12●
****第十二章 進藤と塔矢 和谷****
「…はぁ……」
今日、20回目。
久しぶりに進藤が俺の部屋に打ちに来たと思ったら、さっきから溜め息ばかり。
「…どうした?」
「え?」
「さっきから溜め息の連発じゃん。彼女にでもフラれたか?」
ここんとこ進藤の浮いた噂は耳にしないが、コイツのことだから女の一人や二人余裕でいるだろう。
16、17ぐらいの時は俺もよく相談に乗ってやったもんだ。
今はなぜか完全秘密主義だけど。
「…子供が出来たんだって…」
「は…?」
はぁあああ??
子供?!
「マジで?!」
「はぁ…結構マジに避妊してたんだけどな…なんでだろ」
「いや、お前過ぎたことそんなのんきに考えてる場合じゃないって!結婚どうするんだよ?相手の家には挨拶行ったのか?」
「はぁ…」
結局溜め息ばっかついてて、詳しいことは全然聞けなかった。
まぁ何だかんだ言ってもそのうち結婚式の招待状とか届くだろ、と放っといたわけだけど……一向に音沙汰なし。
そのまま半年が過ぎてさすがに大丈夫なのか?もしかして下ろしてもらったのか?と思いだした頃、たまたま進藤の家に行く用事が出来た。
チャイムを鳴らした後、出てきたのは―――
「あ。和谷、いらっしゃい」
なんと赤ん坊を抱き抱えた進藤だった。
「し…進藤…それ…」
「へへ〜可愛いだろ。オレの息子」
「息子…って」
なんと既に生まれていた。
でも奥さんの姿はなし。
代わりにいたのは……
「塔矢…?」
「うん。手伝いにきてくれてるんだ」
「手伝いって…塔矢の奴病気なんだろ?大丈夫なのかよ?」
「うん。来月から復帰するって」
「へぇ…」
まぁ塔矢が大丈夫なら、進藤にとってこんなに心強い奴はいないだろう。
なんせ三年前、同じ状況になった奴だし。
進藤もシングルファーザーになるのか……
「進藤お前…結婚はしないのか?」
「んー?法律が変わったらしようかな。な?塔矢」
赤ん坊を塔矢に手渡した進藤が、親しげに塔矢の肩に手を回した。
少し顔を赤くして、満更でもない様子の塔矢。
あまりに自然すぎて、不思議と男同士で気持ち悪いとか思わなかった。
今は色んな形の家族がいる。
コイツらが幸せなら、それはそれでいいのかも…と思ってしまった。
―END―