●CHANGE 10●
****第十章 その後 アキラ****
「アキラ君、いつの間に子供なんか作ったんだ」
手合いに復帰してすぐ、緒方さんが家にやってきた。
居間で寝ていた娘に当然のように面食らっている。
「意外と手が早かったんだな君は」
「緒方さんに似たのかもしれません」
「はは。で?結婚はしないのか?ああ…まだ17か」
「18になってもしませんよ。一人で育てます」
「ほう」
本当は進藤と二人で、だけど。
今日ももうすぐ進藤がやってくる。
早く帰らないかな…緒方さん。
「一局打たないか?」
「打ちません」
「最近冷たいな」
明らかに帰ってほしいオーラを出してるのに、のんびりお茶なんか啜ってる。
出すんじゃなかった。
「こんちわ〜」
そうこうしてる間に進藤が来てしまった。
「今のは…進藤の声か?」
「そうですね」
「玄関に行かなくていいのか?」
「彼はいつも勝手に上がってきますので」
「……」
言った通り、バタバタという足音がこっちに近付いてきた。
「塔矢〜!オシメ買ってきたけどこれでよかった……て緒方さん」
「進藤…お前は知ってたのか?アキラ君の子供のこと」
「あ…はい。ていうかオレの子でもあるし…」
「は?」
「あ、いえ、何でもないです」
進藤からオシメをもらい、早速交換し始めた。
進藤は進藤で粉ミルクを作り始め、僕らの手慣れた様子を緒方さんは目を点ににして見ていた。
「熱さこのくらい?」
「うん。ありがとう」
「オレが飲ませていい?」
「いいよ」
僕から娘を受け取って、ミルクを飲ませ始めた。
「お前ら…何があった?」
「何も」
「そうか…何だか目眩がしてきた。帰る」
「お気をつけて」
緒方さんが帰った後、僕らは同時に吹き出した。
「緒方さん驚いてたなー。面白れー」
「僕がどこかの女性と作ったと思い込んでた」
「そりゃ誰だって、まさかオマエ本人が産んだとは思わねーよ」
「この調子で家族以外、全員騙そう」
「ああ」
今はもちろん嘘をつかなくちゃいけないけど、でも…いつかは世間に本当のことを言える日がくるといいな。
この子は僕ら二人の娘だって――
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