●CARRY AWAY 9●
一度目は旅館で。
二度目はホテルで。
両方僕の方から誘った。
そして――三度目
まさかキミの方から誘ってくるなんて思いもしなかった。
しかもここは雑木林だぞ?
木陰になってるとはいえ、こんな炎天下の真っ昼間からだなんて…。
しかも進藤、キミは今日彼女とここに来てるんだろう?
彼女放って置いて、僕なんかに構ってていいのか?
――それでも
今日僕がここに来たのは、キミ達の邪魔をすることだったから……叶ってくれて嬉しい。
「塔矢…」
僕の名前を何度も呼びながら、貪りつくように体中に唇を押しつけてきた―。
彼にされるがまま、上も下もどんどん煽られていく―。
気持ち良さに体が支えられなくなって、進藤に凭れかかると――そのまま地面に押しつけられた―。
彼も時間と場所を多少は気にしているのか…いつもより余裕がなさそうだ。
それでもお互い離れようとはせず、無我夢中で体を合わせていく―。
…僕はこの瞬間が好きだ。
この時だけは、キミが僕のことだけを考えてくれるのかと思うと…すごく優越感に浸れる。
そのまま彼女のことなんか忘れちゃえばいいのに―。
僕だけを見てくれればいいのに―。
進藤……僕だけのものになって―。
「塔矢…っ」
「…ぁ……―」
体を動かしていた進藤も達したのか、今回も中に溢れさせてきた―。
この瞬間も快感。
だって…キミの子供を宿すチャンスを与えられてるわけだし。
…ただ気になったのは、今回は安全日かどうかキミが聞かなかったってことだ。
そろそろヤバい頃だって分かってる筈…だよね?
「進藤…」
「ん?」
「確認しなくてもいいのか…?」
「何を?」
「……」
『何を?』だって…?
余裕だな…。
「――あ、もしかして今日が安全日かどうかってことか?」
「……うん」
進藤が一瞬目を細めて笑って、僕の中から引き抜いた。
そして体を起こしてくれたかと思うと――ぎゅっと抱き締めてくる―。
「…聞いてほしかった?」
「え?いや…そうじゃないけど、キミは…心配じゃないのか?」
「全然。だって危険日だったらオマエの方が意地でも抵抗するだろうし。しないってことは今日は大丈夫なのかな〜?って思っただけ」
「……」
つまり…キミは僕の方も妊娠するのは嫌だと思ってるわけだ…?
でも残念。
僕はそうなることを狙ってるんだよ…?
キミを手に入れる為に―。
「実は…そろそろヤバい頃なんだ」
「ふーん」
「……」
『ふーん』…って。
どうしてキミはうろたえないんだ?
今のは実は危険日でした…って言ったようなものなのに―。
妊娠するかもしれないって言ってるんだぞ?!
「そろそろ戻るか」
「あ……うん」
あっさり話題を変えられて、僕は訳が分からなかった。
キミは一体どういうつもりなんだ?
まさか……出来たらおろせばいいじゃんぐらいに軽く考えてる?
キミはそんなこと絶対に言わないって思ったのは僕の思い違い?
もしかして…キミは彼女を含む今まで関係を持った子達全員に…こんな態度を取ってたのか?
キミが長続きしないのはその為?
そう思うと……一気に顔が青ざめた。
それじゃあこんな計画…何の意味もないじゃないか。
キミってそんな最低男だったのか?!
進藤と再び来た道を戻ってる間、僕はそんなことばかり考えて……泣きそうだった。
――でも
「じゃ、ここまでな」
「…うん」
「塔矢も気をつけて帰れよ」
「…うん」
少し茫然と立ち尽くしてる僕の耳に、彼がそっと口付けてきた。
「…もし出来てたらさ、すぐに教えてくれよな」
え…?
耳元で囁かれたその言葉に、思わず顔をあげると――少し照れくさそうな表情をした進藤が僕を見つめてた。
まるで
『その時は覚悟を決めるよ』
と言ってるような……そんな表情。
「さ〜て、オレも桜んとこに帰るか」
進藤がくるっと向きを変えて、その方向に歩き出した。
僕も少し緩んだ表情で、芦原さん達がいるパラソルに向かう。
さっきの進藤の表情…。
やっぱり期待してもいいのかな?
信じてもいい…?
「アキラくん!」
「アキラっ!」
パラソル近くまで来ると、僕がいなくなって心配していたのか、芦原さんと市河さんが血相を変えて近付いてきた。
「どこに行ってたんだよ?!」
「心配したのよ?!」
「ご、ごめんなさい。少し向こうの岩崖が見たくなって…」
そう言うと、ほっとしたようにいつもの表情に戻してくれた。
二人には悪いけど、取りあえず今日の目的はクリアだ。
進藤は絶対誰にも渡さない。
この調子で一刻も早く、あの女から奪ってやる―。
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