●CARRY AWAY 10●




今日ほど……自分の行動が理解出来なかったことはない―。



そんなにアイツのあの格好に欲情しちまったんだろうか…。

彼女を放っておいて、塔矢とヤるなんて…。

しかも真っ昼間から…外で…。

それってもしかしなくても青姦…か?

うわぁぁぁあっ!!


塔矢と別れた後――さっきまで自分がしていたことを思い返せば返すほど、穴があったら入りたくなった。


しかもアイツ……今日あたり危険日だったらしい。

事後報告って卑怯じゃねぇ?

思いっきり中に出しちまったし…。

いや、ヤる前に聞かなかったオレもオレだけど。


……でも

やっぱり聞いてたとしても、結果は同じだった気が…する。

うん。

むしろ一瞬……それじゃあもっと出せばよかったかな……とか思っちゃったぐらいだし。


はぁ…。

オレはどうやら本気で、塔矢が妊娠してもいいと思ってるらしい…。






溜め息を吐きながら彼女のいる場所に戻ると――野郎2人と楽しそうに話してるアイツの姿が目に入ってきた。

「あ、ヒカルっ!」

桜がオレに気付いて、こっちに手を振ってくる。


「もー、どこ行ってたの?!」

「ごめん。ちょっと腹の調子が悪くて…」

「大丈夫?」

「うん、もう平気」

桜には笑顔で返し、同時に男どもを睨み付けた―。


「桜ちゃんの彼氏?カッコいいねー」

「でしょ〜?」

桜が自慢げにオレの腕を組んできた。

「じゃあ邪魔しちゃ悪いし、オレらもう行くわ」

「メールするな〜」

「うん、バイバーイ」

二人が離れた後、桜が拗ねたような顔をオレに向けた。


「ヒカルが悪いのよ?勝手にどこか行っちゃうから」

「ごめん…」

素直に謝ると、彼女はニッコリ笑って――オレの頬に軽くキスしてきた。


「そうそうさっきの人達ね、オープンカーのコンバーチブルでここに来たんだって」

「へー」

帰る仕度をしながら、桜が楽しそうに話し出す。

「ね、ヒカルは車買わないの?」

「買う以前にオレ免許持ってねーもん」

「取ればいいじゃん。ヒカル運動神経良さそうだし、すぐ取れるって」

「でも通う時間が取れねぇからな…。もうしばらくは無理かも」

そう言うと、つまらなそうに溜め息を吐いてきた。


「あーあ、ヒカルとドライブ行きたかったのに」

「ごめんな。また来年あたりに時間見つけて頑張るからさ」

「絶対だよ?」

「うん」




――その晩

オレは彼女にせがまれて、コイツの部屋にお泊まりすることになった。

もちろんセックスは必須。

避妊は絶対。

一日で二人の女を抱くのってちょっとキツいよなー…なんて最初は思いながらも、ベッドの上でキスしちゃったりすると――あっさりスイッチが入る。

塔矢ん時とはまた違った快感が得られるし、彼女とするのも大好きだ。

大人の魅力っていうの?

3つしか違わねぇけど、彼女は元々経験豊富だから…男の喜ばし方をよく知ってる。

容姿だって元ミス・キャンパスは伊達じゃない。

こういう女を抱けるのって、男としてちょっと優越感に浸れるよなー。


「私、ヒカルとエッチするの好きよ」

終わった後、そう満足げに言ってくれた彼女の胸にキスしながら

「オレも」

と付け足した―。


「ね、次いつ遊べる?金曜は仕事ないんだよね?」

「あーごめん。明日から大阪に出張でさ、金曜に帰ってくるからちょっと無理かも」

「じゃあ月曜は?」

「月曜は棋士仲間とプールに行くから」

「えー」

彼女が拗ねたように口を膨らましてきた。


「そのプールって…泊まり?」

「んー、どうだろ。次の日仕事のない奴等は泊まるかもな。ホテルに直結してる所だし」

「ヒカルは泊まるの…?」

「たぶんな」

「……」

何やら不穏な目でオレを見つめてくる。


「それって…あの子も一緒なの…?」

「あの子って?」

「ほら、この前の温泉で……ヒカルと泊まった子」

「あー…うん。一緒かな…」

そう言うと、口を尖らしてオレを睨んできた。


「絶対に浮気しないでね!」

「し、しないって!心配しなくても今度は男ばかりの相部屋になるだろうし、女は女で固まると思うしな」

「なら…いいけど―」

それでもまだ疑ってる表情だ。


「今度浮気したら……別れるから」

「うん…肝に命じとく」

とか口では何とでも言いながらも、心ん中では既に塔矢を抱く気満々だったりする。

お前には悪いけど…な。

あー…オレってマジ最低。

でも塔矢のあの言葉がオレを救ってくれる。



『浮気なんてバレなきゃいいんだよ』



そう――バレなきゃいい。


もう止まらない。

後戻りも出来ない。

それほど確実にオレは塔矢に溺れていってる。

たぶん…この先、誰と付き合おうが…誰と結婚しようが…絶対に塔矢との関係はやめれない気がする。




――この時…そう自覚した――
















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