●CARRY AWAY 6●




…まさか桜がいるとは思わなかった…


塔矢と腕を組んでた所を見られたオレは、一気に血の気が引いた。

アイツが怒るのも無理はない。

だってあんなに楽しみにしてた旅行をドタキャンされて、仕方なく友達と来てみたら、そのドタキャンした張本人が他の女といるんだからな。

仕事だって嘘ついてたから余計気まずい…。


「最低っ!」

と叩かれるのも当然だ。

大広間から出て行ったアイツを急いで追いかけて、とにかく真実を話した。

賭け碁のことも、昨夜塔矢を抱いたってことも正直に…。


それでもオレが好きなのはお前だから!

アイツとは一時の気の迷いだから!

ってことを強調したら……何とか許してくれた。


「もう二度としないって約束して」

「するよ…絶対にしない」

そう言って彼女を抱き締めて――キスした―。


一緒に旅館を後にしたオレらは、彼女の家に着き次第――愛を確かめあったり。

昨夜から今朝まであんなに塔矢としておきながら、彼女とも何回も出来る自分の絶倫さに笑える。

ただ一つ塔矢ん時と違うのは、彼女ん時はしっかり避妊してるってことだ。

何で…アイツん時はしなかったんだろ。

そりゃ持ってなかったってのもあるけど…、今までのオレならそういう時は外に出すようにしてたのに…。

バカの一つ覚えみたいにアイツん中に出しまくって……自分の行動がマジで理解出来ねぇ…。

この彼女相手だったらさ、例え安全日だって言われても念のためにちゃんと付けると思う。

出来たら困るし…。



…あれ?

じゃあ塔矢は困らないのか…?

それとも塔矢がどうでもいい相手だから…?


……んなわけねーよな。

塔矢はオレにとって一番大事な存在だ。

囲碁を続ける限り、一生向き合っていかなくちゃならない相手。

かけ替えのないライバル。

そんな大事なアイツが妊娠しても…オレは困らないのか?


でも…

なんとなくだけど…

たぶん…

危険日だって言われても…オレは付けない気がする…。

最低だよな…。

でもオレん中で塔矢だけは…妊娠してもしなくてもどっちでもいい存在っていうか…出来たら出来たで結婚すればいいや〜みたいな気構えなんだ。

うわー…何考えてんだオレ…。

今は彼女を抱いてんだろ!

そっちに集中しろって!

塔矢のことは忘れろ!

どうせもう二度と抱くこともないだろうしな!


と思ったのも束の間――碁会所の帰りに、オレは塔矢にホテルに行こうと誘われる。




「オマエ…変だぜ?どうしたんだよ…」

「別に。発情期なだけ」

「発…ってオマエ、動物じゃあるまいし」

「人だって動物だよ」

「まぁ……そうだけどさ」


オレが渋ってると、塔矢はとんでもないことを言い出した。


「キミが相手してくれないのなら別にいいよ。他の人を誘うから」

「はぁあ??!」

一瞬耳を疑った。

コイツ……男なら誰でもいいのか?!

そんなのオレが許さねぇ!

オマエがよくてもオレが許さねぇ!


……でも

彼女に二度としないって約束しちまってるから……悩む。


「進藤!相手してくれるのか、してくれないのか、ハッキリしてくれ!」

「そりゃ……してやりたいけど、彼女にもう二度と浮気しないって約束しちまってて…」

「なんだ、そんなことか」

「そんなことって…オマエ…」

塔矢がオレの腕を組んで、そっと耳元で囁いてきた―。


「浮気なんて…バレなきゃいいんだよ―」

思わず目を見開いてしまった―。

「塔矢…オマエ性格変わってねぇ…?」

「そんなことないよ。僕はキミが欲しいだけだ」

「……」

「抱いてくれる…?」

「……うん」

小さくそう頷くと、塔矢はたちまち笑顔になって、頭をオレの肩に凭れさせてきた―。


この時既に、彼女への罪悪感より…塔矢を再び抱けるという嬉しさの方が勝っていたことは言うまでもない―。





ホテルに着いたオレらは、シャワーを浴びることも後回しにして――触れあった。

「塔矢…今日は安全日?」

「うん…まだ大丈夫―」

一応聞くだけ聞いてみる。

本当はどっちでもいいくせにな…。


二度目の塔矢はすごく積極的で、自らオレに触れてきて、責がんできて、ますますオレを夢中にさせた―。

でも相変わらずこの感度に、声の色っぽさに、表情の可愛さだ―。

堪んねぇ…―。


そしてコイツの安全日宣言に託つけて、またしても生でして…中に出しまくった。

すげぇ気持ちいい―。

何度もキスしながら何度も挿れて、何度も達してく―。


「進っ…もう、無理…―」

って言われても体力が保つ限り―。


もう全て出しきって、ぶっ倒れた後も…事後行為を楽しんでみた。

ただのイチャつきとも言うけど。


だけど…彼女のことを口に出されると、一気にそのムードが冷める。

「キミは…彼女のどこが好きなんだ?」

「うるせぇなぁ…そんなの今はどうでもいいじゃん…」

本当に心の底からどうでもいい気がした。

それぐらい…今のオレはオマエに酔ってるんだ―。


もっともっとオマエに触りたい。

キスしたい。

体を重ねたい。





――でも


全て塔矢次第だ――















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