●CARRY AWAY 5●


まだ外が微かに暗い時刻に、僕は目を覚ました―。


一番に目にしたのは――進藤の鎖骨。

どうやら僕は彼に抱き締められて眠ったらしい。

いや、途中で気を失ったのかも?


進藤はまだ熟睡してて、昨夜の行動が嘘のような可愛い寝顔だ。

昨夜…か。

思い出して一気に顔が真っ赤になった。


彼女が言っていた通り、進藤は本当に上手い気がする。

と言っても僕は他の人としたことがないから、比べようがないけど―。

でも、初めてだったのにそんなに痛くなくて、あんなに気持ちよくなれたのは…やっぱり彼が上手いからだと思う。

今まで何人の女性を喜ばせてきたんだろうな…。


そう思うと無性に腹が立って、僕は進藤の髪をキツく引っ張った―。


「…っ…―」


その痛さで目が覚めたのか、進藤がゆっくりと瞼を持ち上げてきた。


「塔矢…おはよ」

すごく可愛く微笑んで、僕の額にキスしてくる―。


そして更にキツく抱き締めてきたと思ったら、右手で胸を揉み出した。

「進藤…っ!」

「まだ起きるには早いだろ…?な、もう1ラウンドしねぇ?」

「え……」

一瞬ギクリとしたけど、進藤は既にする気満々らしく――僕を仰向けにして、覆い被さってきた―。


口以外にも頬やら耳やら首やら、あらゆる所にキスしてきて、胸を唇でも弄り始めた―。

「…ぁ…―」

そしてまた僕は敏感に反応する。

下の方も弄られて、煽られて、再び中へと挿入された―。

「あっ、あぁ…んっ―」

そしてこれにも感じて声を響き渡らせる僕。


昨夜から…一体何回進藤を受け入れてるんだろう…。

どのくらいの量を中に出されたんだろう…。

僕の中は既にキミの精液でいっぱいな気がする…。


それなのに…更に出してくる。

もし今日が安全日じゃなかったら、確実に妊娠しそうなぐらい―。


…もし僕が妊娠したら、キミは責任を取ってくれるんだろうか。


彼女と別れてくれる?

僕と結婚してくれる?

それとも……おろせって言うのかな?


でもね、キミのことを一番よく知ってる僕だから分かる。

キミはそんなことは言わない。

絶対に―。

必ず責任を取ってくれるはず―。


その結論にハッとした。


そうだよ。

キミを彼女から奪うにはこの方法が一番だ。

これなら今の彼女だけに留まらず、一生進藤を僕だけのものに出来る。

名案かも!


――こうして僕は決心した


絶対進藤の子供を身ごもってやるってね――





「塔矢…」


一通りし終わった後、僕の上から体を退け、彼は横にゴロンと寝そべった。

僕の髪を触り、名残惜しそうにキスしてくる。


そんなに残念がらなくてもいいよ。

またすぐ抱かせてあげる。


今度は危険日にね――






「…そろそろ起きるか」

「うん、朝食食べに行こう」


朝食は1階の大広間でバイキングだ。

進藤は気付いてないけど…この旅館にはキミの彼女も泊まってる。

もしかしたらハチ合わせて…修羅場になるかも?


でもキミは当然彼女を取るんだろうね…。

そう思うと少し寂しくて…、1階に着くまで僕はずっと進藤の腕を握り締めてた。


――当然…

彼女の姿を目にした途端、払われてしまうんだけどね――






「え…ヒカル?」

「桜…?」

「どうしてこんな所にいるの…?仕事だったんじゃ…」

「え…、あ…その…」

彼女が僕の方に視線を向けた。

「誰よその子…」

「えっと…同僚」


確かに嘘ではない。

でも彼女は当然信じられないみたいで、怒りに震えてる。


終いに

「最低っ!!」

と進藤を手の平で叩いた後、大広間から走って出ていった。

慌てて進藤はそれを追いかける。



…この後の展開なんて目に見えてる。

進藤は僕なんかより彼女が大事だろうし、彼女も1回くらいの浮気じゃ進藤を手放さないだろう。

昨日温泉で言ってたもんね。

年収がどうだとか、エッチがどうだとか…。

きっと仲直りして終わりだ――


そんなことを考えながら、僕は一人で朝食を食べた。

部屋に戻ると進藤は帰る準備がほぼ終わってて――


「ごめん、塔矢。オレあいつと帰るから」

「…分かった」

「精算は済ませておくから、鍵だけオマエが帰る時フロントに返しといて」

「…うん」


それだけ言って早々と進藤は部屋を後にした―。



「もう一回温泉入ってこようかな…」



予想通りの展開になったけど、やっぱり寂しさは押さえ切れなくて……少し涙が滲んできた。

こんなに進藤を欲したのは久しぶりだ。

あの14の秋以来、キミと毎日打てるだけで満足してたのに…。

今は棋士としてのキミ以外も欲してる。


キミの全てが欲しい。

キミを手に入れたい。

キミを…僕のものだけにしたい―。



…早くそうなるといいのに…








――数日後

いつものように囲碁サロンで対局した帰りに、僕は再び彼を誘ってみた――



「進藤、ホテル行かない?」













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