●CARRY AWAY 3●


進藤と大浴場の前で別れ、一人温泉に浸かっていた時――僕は聞いてしまったんだ―。



「うそっ!ドタキャン?!」

「最悪でしょ?これだからガキは嫌なのよ」

「でもウチら誘ってくれてサンキュー。一度来てみたかったのよ、ココ」

「エヘヘ。私もどうしても来たかったからさ、もう女同士でもいいやって思って」

「でも温泉って女同士の方が楽しいよね。彼氏と一緒だとお風呂は別で寂しいし、そのくせ夜はムダに疲れるしー」

「やだ!京子イヤらし〜」

「だってそうでしょ?!私、彼と一緒に来て何もなかった時なんて一度もないもん」

「分かる分かる。何か温泉旅行イコール=エッチみたいな感じがあるもんね。桜も今回もし彼と来てたらさ、絶対この後そうなってたハズよ」



ここまでの会話でも、僕は熱でノボせるかと思った。

そうなんだ…。

温泉旅行って……そういうことするんだ。


――でもこの後何となく勘付いてたことを確証されることになる。



「えー、私はエッチ大歓迎なんだけど。だって今の彼氏すっごい上手いんだもん」

「マジ?いいな〜」

「でも桜が今付き合ってる彼って年下でしょ?」

「うん、18歳。すっごく可愛いんだよ〜。ジャニーズ系で!」

「でもアンタって年下には興味ないって言ってなかった?」

「興味ないよ。だってガキじゃん?私らより年下だとほとんど学生だしさー、デートで割り勘とかいう考え方がありえないって今まで思ってたんだけど、ヒカルはそこらの年下とは違うのよねー」


やっぱり…ね。


「ヒカル君って言うんだ?」

「うん、すんごいんだよー。その歳で年収1000万超えてるし」

「マジ?!職業何?!ホスト?!」

「違うって。何か囲碁のプロ棋士なんだって」

「へー。囲碁って儲かるんだ?」

「ううん、ヒカルが特別強いからみたい。でも土日はいっつも仕事入ってて全然遊べないの。やっとウチらが休みに入って平日でも遊べるようになったのにさ、今回の旅行いきなりドタキャンでしょ?最悪」

「ついてないね。でも公務員の彼とこの土日、旅行に行くんでしょ?そっちで癒されてくればいいじゃん」

「でもエッチが微妙なのよねー。やっぱ30近くなるとあんまり保たないしさ、10代には適わないっていうか…」

「でも将来安定の公務員だもんね。キープ、キープ」

「あはは」


ここまで聞いた所で、僕は浴場を後にした―。



あの人が進藤の彼女なんだ…。

しかも平気で二股してるし…。

進藤が可哀想というよりは、あんな女の為に僕との対局時間が減らされるなんて…我慢出来ない気がした―。


こうなったら……とことん邪魔してやる。

むしろ別れさせる。


まずは手始めに―――進藤を寝取ってやろう。



これでも僕は14の時から進藤とほぼ毎日一緒にいるんだ。

彼のことは僕が一番よく分かってる。

もちろんキミが僕の体に欲情してたってこともね。

そしてそれが恋愛感情とかではなくて、単に女性の体への興味だったってことも。

その証拠に進藤に彼女が出来てからは、そういう目で僕を見てくることがなくなったし。


でも僕は容姿には自信がある。

たとえ彼女がいたって、迫れば彼は落ちるはず。

進藤とはそういう男だ。


……それに少しだが興味もある。

あの尻軽女に上手いと言わせるキミの性技がどういうものなのか――








「進藤…、しようよ…」

僕に背中を向けて、断固拒否する進藤の上布団を捲って――彼の背中に抱き付いた―。


「い、いいかげんにしろって!くっつくなっ!」

「進藤もいいかげんに観念したら?」

「え?ちょっ…オマエ何して―」

一度起き上がり、僕が浴衣を脱いだことに驚いた彼は、急いで目を背けた―。

彼の肩を掴んで一気に体重をかけ――仰向けにさせる。


「と、塔矢…どうしたんだよオマエ…」

「進藤…、僕だって無性にしたくなることだってあるんだ…」

「だからって…」

「キミは女の子にここまでさせておいて…まだ拒否するのか…?そんなに彼女が大事…?」



あんな女が―。



「そうじゃねぇけど…、でもオレ…今日……持ってないし…」

「大丈夫。つい最近生理が終わったばかりだから…しばらくは安全日なんだ」

「そう…なんだ」

「うん…―」


進藤の手を取って、ゆっくりと胸へと持ってきて……揉ませた。

「僕の胸じゃ物足りないかもしれないけど…」

「んなことねぇよ…。すげぇ可愛いし―」

そう言われたことが少し嬉しくて、顔を微かに緩ませると――もう片方の手で頭を引き寄せられ――噛み付くようなキスをされた―。

「んっ、ん…んっ――」

直ぐさま舌を口の中に入れられ、舐め回すように探られていく―。

口の中を貪られる一方で体を転がされ、布団に押しつけられた―。


「ぁ…はぁ…は―ぁ…―」

唇を離されると、お互いの唾液が糸を引き…再び軽くキスされた―。


「塔矢…オマエ初めて?」

「……うん」

声と同時に微かに頷いて返事をすると、進藤は少し嬉しそうに目を細めてきた―。


「…じゃ、オマエのバージンはオレが頂くな―」

耳元でそう囁かれ、僕はたちまち顔が真っ赤になった。



いいよ、進藤…。


僕の全てをキミにあげる――












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