●CARRY AWAY 17●
『彼女とは別れる』
そう彼が言ってくれた瞬間――僕は心の中でガッツポーズをした。
勝った…!
キミを彼女から奪えた…!
やった!
もう二度と誰にも渡さないから。
キミには一生僕の側でいてもらうからな。
これからは彼氏として。
将来は夫として。
もちろんライバルとしても―。
「塔矢…―」
進藤がまたしても僕に触れてくる。
キミを本当の意味で手に入れた後の…この行為は最高。
声を消す為にテレビの音量を上げてくれたから、その喜びを十分に声でも表せれるし―。
……でも
違和感を感じる……
何かがいつもと違う気がする…。
でも、それが何なのかは分からない…。
あえて言うなら……いつもよりキスが多い?
愛撫の時間が長い?
そして…体の動かし方がいつもより優しい気がする…。
「……ぁ、んっ…―」
「塔…矢っ…」
彼が達した瞬間はすぐに分かる。
中に…思いっきり出してくるから―。
脱力した彼は僕に覆い被さるように…上から抱き締めてきた―。
口のみならず、頬や首筋にたくさんキスをして――
「塔矢…好きだ…」
「進藤…」
キツく抱き締められながら耳元で囁かれた―。
――そう
一番の違いはこれだ!
一体これで何回目だ?!
何で急にこんなに愛を囁いてくるんだ?!
これが彼女の特権なのか?!
それとも僕が言わないから、キミが代わりに言ってるのか?!
意味が分からないぞ!進藤っ!!
……とか思いつつも、その言葉に胸をときめかせて…喜んでる自分がいる…。
すごく…嬉しい。
つい僕も同意してあげたくなるほど―。
僕も好きだよ…って。
…でも、軽はずみな発言はしたくない。
本当にキミを好きになった時に、ちゃんと言いたいから―。
「―…塔矢…」
髪に何度も唇を押し当ててキスしてくる―。
優しく撫でてくる―。
甘い言葉を連発してくる―。
何だか…
今日のセックスにはすごく愛が籠ってる気がする…。
こそばゆい程に―。
これは気のせいじゃない…よね?
―――翌朝
僕は彼の腕の中で目を覚ました―。
身動きが取れないほどキツく抱き締められてる。
「進藤!起きて!」
「―…ん…、…なに…?」
「『なに?』じゃないよ。もう起きないと…」
「んー…もうちょっとー…」
「もう!じゃあキミは寝てていいから、僕を離してくれ!」
「やだー…」
「進藤っ!!」
離れようともがくものの、一向に力を緩めてくれない。
まるで僕をもう何処にも誰にもやらないって…言ってるみたいだ―。
離れることを諦めて、僕の方からも彼に抱き付くと――額に音をたててキスされた―。
「塔矢…好きだよ―」
「……ありがとう」
少し頬を赤めて進藤の方に顔を向けると――幸せそうな表情をした彼と目があった―。
続けて顔のあちこちにキスしてくる―。
「…ぁ…―」
どうしよう…。
すごく…心地いい。
嬉しくて…もうどうにかなりそう…―
…こんな気分になったの初めてだ…
「…塔矢知ってる?」
「え…?」
ぼーっと幸せに浸ってる僕の耳元で、進藤が何やら言い出した。
「愛のあるセックスの方がさ、子供って出来やすいんだって」
「…へぇ」
「何とかいう作用がどれかに働いて、何かがこう変化するらしいんだよ」
「いや、その説明全然分からないんだけど…」
「つまりぶっちゃけちゃうとさ、男はより精子が活発になって、女はよりそれへの抵抗がなくなるってこと」
「…ふーん」
「だからさー、もし昨日が危険日だったら絶対に出来てたと思わねぇ?昨夜はすげー愛が籠ってた気がするんだよ、オレ」
「……そうだね」
「だろ〜?」
僕も…そう思う。
昨夜のは本当にいつもと違ってた。
でも僕は変わってないよ…?
変わったのは――キミだ。
「この調子だとオマエ、今年中に妊娠すんじゃねぇ?」
「え……」
思わず目を見開いてしまった僕を見て、進藤が頭を傾げた。
「…やっぱ嫌か…?嫌なら避妊してもいいけど…」
「……」
確かに昨日までの僕は孕む気満々だった。
でもそれはキミを手に入れたかったからだ。
だけど……手に入れてしまった今となっては、その必要はないんじゃないのか…?
「僕は…嫌ではないよ。でも別に今でなくてもいいと思うし…。キミの方はどうなんだ…?」
「オレ?んー…そうだな、オレもいつかは欲しいけど、別に今じゃなくてもいいかな。よく考えたらオレらまだ18だし」
「じゃあ…」
「分かった。危険日ん時はちゃんと避妊するな」
そう言うと進藤は再び僕の頬にキスして、そしてようやく腕を解いてくれた。
進藤…。
いつかはちゃんと産んであげるからね。
キミの子供を―。
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