●CARRY AWAY 15●
――結局
僕の身持ちの固さを思い知らせるどころか――バスルームでしてしまった…。
でも!
僕にはキミだけだからな!
他の人とはしたことないし、したいとも思わない。
きっと進藤以外の人に触られると……気持ち悪さに鳥肌が立つと思う。
キミにだけは信じて欲しい。
僕には本当にキミだけなんだって。
体だけじゃなくて、心も碁も全部。
昔から、ずっと…―。
だから…
キミの彼女にすごく嫉妬してる。
キミを彼女から奪いたい。
僕だけのものにしたい。
そう思ってるんだ…―。
「塔矢…」
本心を伝えると、進藤は目を大きく見開いてきた。
僕の髪に撫でるように触れてくる―。
「塔矢それって……オレのことが好きってこと…?」
「分からない…。僕は恋なんかしたことないから…」
「そっか…」
進藤が一度起き上がって、バスローブを手に取った。
僕の体も起こしてくれて、それを羽織らせてくれる―。
「ベッドに移動するか」
「うん…」
小さく頷くと、進藤は直ぐさま僕をお姫様抱っこで持ち上げた―。
「え?あ…進藤っ、僕歩けるから―」
「いいから」
「……」
そしてベッドに優しく横たわらせてくれた―。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
そう言いながら僕の額にちゅっと音をたててキスしてくる―。
「進藤は…恋したことある?」
「オレ?」
「うん」
「んー…恋なぁ…恋…」
何やら腕を組んで考え始めた。
「今の彼女には恋してる…?」
「え?アイツにか?まさか…」
「でも、好きだから付き合ってるんだろ?それって恋じゃないのか?」
「確かに好きだけど……ちょっと違うな。オレも結構冷めた人間だからさ、そんな燃えるような恋愛なんてしたことないし」
「そう…なんだ」
「うん。オレって寂しがり屋だから、一緒に居てくれる奴が欲しいだけなんだよな。多少居心地がよくて、一緒に遊びに行けて、セックスが出来たら正直言って誰でもいい」
「……」
進藤が僕の目を見つめてきた。
「単に臆病なんだよ…。本気で好きになっても、相手に拒まれるのが怖いから…恋すること自体から逃げてる。失うのが怖いんだ…本当に」
「……」
それでも……僕よりマシだ。
僕はもう18年も生きてるのに、一度も人を好きになんかなったことがない。
ときめきなんて感じたことがない。
胸が苦しくなったこともない。
僕って…一生このままなのかな…。
「…今の彼女もさ、同じような部類なんだよ」
「え?」
「歳が歳だから仕方ないのかもしれねーけど、恋っていうより単に自分を養ってくれる結婚相手を探してるって感じ」
「……」
「頭いいのに卒業したらすぐ結婚したい派でさ、勿体ねぇよなー」
「じゃあ…キミが結婚してあげるのか?」
「してもいい?」
「え…?」
な、何で僕に聞いてくるんだ…?
キミが彼女でいいのなら…勝手にすればいいじゃないか!
――そう思うと、胸が急に締め付けられるように痛くなった。
…嫌だ!
やっぱり絶対嫌だ!!
彼女と結婚なんかするな!
キミが誰かのものになるなんて我慢出来ない!
キミは絶対に渡さない!
「進藤…」
「ん?」
「しないでくれ…、結婚なんか…誰とも―」
「誰とも?」
進藤がプッと吹き出した。
「オマエのその独占欲は嬉しいけどさー、それはちょっと無理かな」
「無理…?」
「うん。確かにオレって冷めてるけどな、これでも人並みに結婚願望はあるし、子供だって欲しいもん」
「……」
「オマエが今の彼女と結婚するなって言うんだったらまだ考えてもいいけどさー、この先一生結婚するなってのは無理難題だぜ」
「…キミって鈍感…」
「え?」
僕はまたしてもシーツにくるまって、進藤に背を向けた―。
キミは僕の気持ちを全然分かってない。
確かに結婚しないでって言ったけど、それは別に一生独身でいてくれって意味じゃないのに…!
何の為に僕が孕もうとしてると思ってるんだ!
キミと……結婚したいからだよ…!
「進藤…」
「ん?」
「僕が妊娠したら……結婚してくれる…?」
「もちろん」
即答されて思わず目を見開いてしまった―。
頭だけゆっくり進藤の方に向ける―。
「本当…に?」
「ああ」
「絶対…?」
「うん」
「約束…してくれる?」
「いいよ」
進藤が僕の手を取って――甲に唇を押し当ててきた―。
「もし出来たら…結婚しようぜ―」
「う、うん…」
「塔矢も絶対におろさないって約束してくれ…」
「え…?」
進藤がいつも以上に真剣な面持ちで僕を見つめてくる―。
「絶対に産んでくれ…」
「わ、分かった」
そう言うとホッとしたように、唇を合わせてきた―。
どうしよう…。
嬉しさで顔が緩む―。
もし出来たら、キミは本当に結婚してくれるんだ…!
――でも
出来なかったら…?
…僕たちの関係は一体どうなるんだ…?
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